トマトの栽培でよく聞く尻腐れ病。
病気と書いているけど、カルシウム欠乏が原因みたいで、尻腐れが出た畑ではカルシウムを与えるようにと指導を受けることが多い。
しかしだよ、カルシウムを与えてトマトの尻腐れが治まる方が少なく、大半は尻腐れが悪化する。
悪化するにも関わらず、この手の指導が行われ続けているのは、背景にリービッヒの最小律の考え方があるからだろう。
現代の栽培において、栽培をははじめる前に石灰でpHを調整しておく。
安価な鶏糞が至るところに入っている。
という背景があることで、カルシウムが欠乏することなんて稀である。
※鶏糞にはたくさんのカルシウムが含まれている
それなのにカルシウム欠乏が発生する。
今回はカルシウム過剰についてを紐解いていこう。
まず、カルシウム過剰になるとどうなるか?を石灰には気を付けろの復習としてまとめてみると、
各養分の吸収の規則に従って、カルシウム過剰になるとマグネシウムとカリウム(他にもある)の吸収が阻害される。
マグネシウムは葉で重要な要素。
光合成に関わっていて、葉の裏にある気孔の開閉にも関わっている。
カリウムは根で重要な要素。
吸水や肥料の要素の吸収は根によって行われている。
ここで水を吸収するためのベースである水ポテンシャルの話を持ちだそう。
ざっくりと説明すると、根がカリウムを蓄えることによって根の浸透圧が土よりも高くなり、根は水を吸収できる。
根で吸収した水は葉に運ばなければならないが根の方が浸透圧が高い。
そこで、葉は気孔から水を蒸散させることによって葉内の濃度を高め、浸透圧を上げる。
つまりは、根が水を吸収するためには、根がカリウムを蓄積することと葉で光合成がしっかりと行われていることが大事で、それにはカリウムとマグネシウムを吸収していることが大事となる。
しかしだよ、土壌のカルシウムが過多であると、根が何らかの養分を吸う時に確率的にカルシウムを吸収してしまうため、土壌にマグネシウムがあったとしてもマグネシウムをコンスタントに吸収することが出来ない。
※土壌中にカルシウムが蓄積すると、土壌の浸透圧が高まり、根からの吸水が阻害されるということもある。
そのうち、葉の黄化が進み、光合成量は減る。
光合成量が減れば土壌からの養分吸収量が減る。
つまりはカルシウムの吸収量も減る。
※実際にはカルシウムの利用効率が下がると解釈した方が良い
というわけで、カルシウム過多の土壌でトマトの尻腐れが発生した時に、カルシウムを追肥しても解決どころか悪化にしかならないということがわかる。
実際には様々な欠乏症が発生しているが、尻腐れしか見えていない人にとってはカルシウム欠乏しか見えていないことになるので、カルシウム過剰によるカルシウム欠乏なんて不思議な現象に見えるわけだ。
実際にはカリウムかマグネシウム欠乏なんだけどね。
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