トマト栽培の土作り事情や高温ストレスと気孔の開閉についてを考えるまでの記事を踏まえた上で、トマトの土耕栽培を止め水耕栽培へシフトする最大の要因である青枯病について整理していくことにしよう。
※写真はトマトではないが、参考までに載せておく。
おそらく、施設栽培をされている方の大半は青枯病に悩まなければ、環境リスクが低く経営を安定させやすい土耕から離れなかっただろうし、新規就農者も施設栽培に憧れる機会が減り、初期投資が低い土耕を選んだはずだ。
青枯病菌が厄介なのは、耕土の深い層に潜伏するという特徴を持つこと。
実際には青枯病菌という細菌は深い層に潜伏が得意というわけではなく、土壌消毒の効果範囲の方に問題がある。
例えば、クロルピクリンという強烈な土壌消毒剤の有効範囲が深さ40cmまでだとする。
青枯病菌は耕土の深さが40cmよりも深い場所でも生育できるとする。
図で示すと上のようになり、上の層は消毒されて青枯病菌がいない。
下の青い層には青枯病菌がいるとする。
この状態はものすごく怖くて、
定植直後の初期生育では根が青枯病菌に触れる事がないので感染することはない。
トマトは木になる果菜類なので、栽培は長期戦になる。
長期戦ということは、収穫時期になるまで時間を要し、当たり前の話だけれども、トマト栽培をしている間は他の作物を育てる事ができない。
もう一点大事な事として、トマトは背丈が高くなる植物であるということで、背丈に合わせて深くに根が伸長する。
つまりは栽培後期に入り、やっと収穫するぞという段階ではじめて根が青枯病菌と接触して感染する。
トマトは栽培期間が長いので、上記のような感染パターンは経営上のダメージが大きすぎる。
冷静に整理してみると、前作で青枯病菌で困ったので、次の作で土壌消毒を行う。
栽培初期では順調に育つので土壌消毒は意図通りに効いたと思い込んでしまう。
栽培後期で前作同様、青枯病菌の被害が深刻化する。
土壌消毒をしたのに何で?ということになるけれども、そもそもの話で土壌消毒なんて効いていない。
土壌消毒の薬剤にかけたコスト、散布した人件費を水の泡にしただけでなく、消毒の酸化作用で土壌鉱物を劣化させ、青枯病菌にとってより住みよい環境にしたに過ぎない。
青枯病菌に感染した株は速やかに畑の外に持ち出せと言われ、実直に持ち出したとしても、
青枯病菌が耕土の深い層に潜伏するという問題を解決しない限り、青枯病菌の被害を根絶することはできない。
多分、この問題を回避する手法は、果樹園で根に酸素を適切に運ぶ為の物理性の改善を参考にすれば良いとアタリを付けている。
トマト栽培で土作りをしながら、品質の向上を模索する方法が必要だ。
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