緑肥について学んでいた際にバイブルと呼べる本がある。


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朝倉書店から出版されている土壌微生物生態学(堀越孝雄 ・二井一禎 編著)という本だ。

この本と合わせて、


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農文協から出版されていた緑肥を使いこなす(橋爪健著)の本と合わせて、記載されている内容をこの目で確認するために片っ端から緑肥のタネを撒いた。




10数年程前、栽培の師である青木さんの元で栽培を学んでいた時のこと。

栽培の中心にはいつも化学


師が新たに1ha程畑を借りて、栽培の準備として、堆肥ではなく緑肥を育てることにした。

緑肥を育てようと思った理由は準備期間としてあまり手をかけたくないことと経費の面でとにかく安いことが理由だった。

この時育てた緑肥というのが、


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写真ではわかりにくいが、イネ科のエンバクとマメ科のアルサイクローバの混播だった。

これら2つを選んだ理由は緑肥のカタログにイネ科は土を耕し、マメ科は窒素固定で自身で養分を獲得すると記載があって、

師は直感でエンバクを採用したいけれども、養分をたくさん使うだろうなということでその養分をクローバに任せるかと判断した。

イネ科とマメ科の緑肥の混播


どちらの緑肥も秋から翌年の春に向けて栽培する緑肥だ。

結果はというとエンバクとクローバの混播が功を奏したのか、クローバが旺盛であったところで顕著にエンバクの背丈が高くなり、春に鋤き込んだ際に少ない手間の割には良い感じの土になっていた。


私はこの結果を見て、耕作放棄地が増える昨今、緑肥の知見は今後重要になると思い、

研修中の身で収入がない中、勇気を振り絞って無収入が続くことを覚悟して、本と緑肥のタネを購入し、片っ端から本に記載されている内容の確認を行うことにした。


この時の生活費は大学院の頃の奨学金の残りで生活していた。

私の所属していた大学院は学生寮が格安で、しかも研究する事以外特にすることもなかったので、仕送りなしの身ではあったが、月に5万程手元にお金が残っていた。




話は冒頭に戻し、

バイブルである土壌微生物生態学の本を久しぶりに本棚から取り出してペラペラとページをめくってみたら、第一章の冒頭の説明で、


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※図:朝倉書店 土壌微生物生態学(堀越孝雄 ・二井一禎 編著) 12ページより引用


土壌中で菌や細菌がどこにいるか?の図があった。

ここに記載されている二次鉱物というのは、文中ではカオリナイトやバーミキュライトなどのような粘土鉱物を指している。

緑泥石という名の粘土鉱物


当時はこの図を見てもスルーだったけれども、今見るとこの図一つからでも栽培で活用できそうなことが色々と頭に浮かぶ。

注目すべきは粘土鉱物が有機物とつながりながら、一次鉱物同士や鉱物と植物の根の間に挟まるように分布している他、細菌が粘土鉱物の周辺に多く存在している。


本の次のページでは、


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※図:朝倉書店 土壌微生物生態学(堀越孝雄 ・二井一禎 編著) 13ページより引用


粘土粒子の側面が正に帯電していて、土壌の細菌は粘土粒子の正の電荷に引き付けられて集まると記載されていた。

1:1型粘土鉱物に秘められた可能性


緑肥を育てる時、狙う効果の一つに根圏の微生物を豊かにするというものがある。

主にクローバやヒマワリあたりがこの効果のある緑肥に当たる。


もし、クローバやヒマワリを育てる時に畑によっては粘土鉱物肥料を元肥で仕込んでおくと効果が高くなるかもしれないと色々と想像を掻き立てる。


当時も冒頭の本から色々なヒントを得られたけれども、

経験値が溜まって、改めて見直すと当時とは異なるヒントを得ることが出来る。


まだまだわからない事だらけだと痛感する。


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