前回のフランスパンは他の国のパンと何が違う?の記事で、フランスの国土から収穫できる小麦はグルテンの量が少なく粘弾性が低い為、粘弾性を低下させるような糖や油脂類をパン生地作成で使用することが出来ずにハードパンになった。
という話を記載した。
この話を見て、ふと日本の小麦もグルテン量が少なく、粘弾性が必要なパンや麺に向いていないという話を思い出した。
拙い作物学の知識を一生懸命思い出すと、確か品種の問題ではなく、日本の土質や気候の問題だったはず。
国産小麦の大きな特徴として、グルテン量が少なく、灰分(ミネラル)が多いとされる。
一方で国産小麦の中でグルテン量が増した品種もあったはずで、これらの品種からグルテン量に関する知見はきっと蓄積されているはず。
ということで、Google Scholarで検索してみたところ、島崎由美等 総説 小麦の子実タンパク質含有率 -栽培による制御の可能性- 日本作物学会紀事 第79巻 (2010)という読み物に行き着いた。
形態学的な事は置いといて、
小麦の子実タンパクはアルブミン、グロブリン、グリアジンとグルテニンから構成されていて、おそらくアルブミンとグロブリンは肥培管理等に関わらず一定量の蓄積があるとされる。
グリアジンとグルテニンの量こそがグルテンの量に影響を与え、土質や肥培管理によってこの2つのタンパクの量に変化が現れるらしい。
つまりは子実中のタンパク量を何らかで増加させた場合、増加するタンパクのほぼすべてがグルテンと認識して良いはずだと。
もうちょい触れておくと、小麦の子実の大半の成分がデンプン(アミロース等)でタンパクの含有量は10%前後で、何に使用するか?によって許容量があり、パンや中華麺等に使用する小麦粉の許容量が最大で15%付近となっている。
それでは本題に移って、グルテン量を栽培で制御することを見てみると、子実タンパク質含有率は環境の影響が大きいとされ、窒素肥料の施肥のタイミング、低土壌水分や登熟期の温度に依るとされるが、明確ではない。
※もちろん、品種に依る差も大きい。
上記以外で非常に興味深い話があって抜粋すると
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黒ボク土壌において日本めん用コムギを栽培する場合には、しばしば子実タンパク質含有率がランク区分許容値の12.5%を超える事が観察されるが、この様な場合にはリン酸を施用することで収量を増加して子実タンパク質含有率を低下させることができる。
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※総説 小麦の子実タンパク質含有率 -栽培による制御の可能性- 日本作物学会紀事 第79巻 (2010) 410ページより抜粋
土質がグルテン量の影響があることを匂わせる内容が記載されていた。
国内のコムギの産地は北海道で北海道はおそらく黒ボク土があるはずだから、国産小麦のパンが増えている事も納得できる。
リン酸で子実タンパク量を制御できることを探求すると更に興味深い知見があるかもしれないなと。