肥料の発酵で重要となるスティックランド反応までの記事で、家畜糞と食品残渣を混ぜてメタン発酵した時の反応を見てきた。
炭水化物の大半は有機酸を経てメタンと二酸化炭素になる。
タンパクは炭水化物と同様にメタンと二酸化炭素になるが、途中にスティックランド反応によってアンモニウムイオン(NH4+)が生成される。
アンモニウムイオンは水に溶けやすい為、メタン発酵の際に抽出される消化液に豊富に含まれることになるだろう。
今までの記事では触れてはいないが、脂肪酸もおそらく短鎖脂肪酸(酪酸等)を経て、メタンと二酸化炭素になるだろう。
今まで見てきた反応だと、消化液には水に溶けやすいアンモニウムイオンと、難消化性有機物であるタンニンのような化合物が含まれている事になるはず。
これらの内容を踏まえたうえで、次に気になるのがリン酸になるだろう。
家畜糞に含まれるリン酸といえば、
貯蔵性リン酸であるフィチン酸が主になるはずで、米ぬか嫌気ボカシ肥作り中のリン酸の変化の記事で触れた内容同様、オルトリン酸(H2PO3- or HPO32-)として、消化液の方に移るだろう。
オルトリン酸はメタン発酵に関わる微生物の活動にとって重要であるため、大半は利用されるだろうけれども、核酸やリン脂質として再び消化液に戻ってきて、それがオルトリン酸の形に戻るだろうから、これらの反応は見なかった事にして、オルトリン酸が消化液に移ったという内容のみを見ることにする。
水がないところではオルトリン酸イオンはアンモニウムイオンと塩を形成するので、これらのイオンは対の関係になるはず。
メタン発酵中の溶液にカルシウムイオンがある場合は、オルトリン酸イオンとカルシウムイオンで塩を形成するはずで、リン酸一水素カルシウムは水に溶けにくいので固形の方に沈殿する。
これらの内容をまとめると、消化液中に含まれる主なリン酸の形状はリン酸アンモニウム(リン安)になるわけで、即効性のリン酸ということになる。