前回のホルモース反応の記事で単純な構造のホルマリン(ホルムアルデヒド)溶液に触媒を加えると自然発生する反応によって炭素数が5の糖が生成される反応に触れた。
この時の触媒は水酸化カルシウム(消石灰)であった。
この話を見た時にふと思い出したことがある。
そういえば、粘土鉱物は触媒として働いて、何らかの物質の合成に関与していたなと。
というわけで、
粘土鉱物が触媒として関与して有機物を合成している事例がないか?検索してみることにした。
橋爪秀夫著 粘土基礎講座Ⅰ- 生命の誕生と粘土 - 粘土科学 第41号 第3巻 144 - 149(2001)という読み物に辿り着いた。
この中から興味深い文章を抜粋してみると、
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糖類の合成では濃いホルムアルデヒド溶液から簡単な糖類は得られますが、種々な異性体も存在することが知られています。アルミナやカオリンを加えて希薄なホルムアルデヒドを熱することにより糖類が生成することも知られています。しかしながら糖類は異性化しやすいという点があります。核酸に必要なリボースやデオキシリボースのような5単糖は分解されやすいのですが、モンモリロナイトなどが共存すると分解されにくくなるという報告もあります。
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※橋爪秀夫著 粘土基礎講座Ⅰ- 生命の誕生と粘土 - 粘土科学 第41号 第3巻 144 - 149(2001) 145ページより抜粋
文中にあるリボースのようなリボースを選択的に合成するのは難しいという記載はあったが、DNAやRNAの基である糖のようなものが粘土を介して合成可能であることに記載があった。
合わせて、粘土鉱物表面上でアミノ酸のグリシンが結合したという報告も記載されていた。
引用に用いている文章では生命誕生であるが、今知りたいことは粘土鉱物が有機物の合成の触媒として関与している可能性があるのか?で、上記の内容であればホルモース反応において関与していると十分に言える。
低分子であるホルムアルデヒドが粘土鉱物の触媒作用によって炭素数3のグリセルアルデヒドになり、グリセルアルデヒドがメイラード反応に似た反応をするのであれば、粘土鉱物が有機物に対して結合しやすい形への変化に働きかけて吸着し、土の形成へと繋がるといった話へ飛躍させたとしても、あながち間違いではない可能性がある。