最近の話題が病害虫の特に微生物由来の病気が多くなってきた。

※昆虫は保留ということで触れずにいるけれども、いずれは触れなければいけない


微生物についても院生の時や仕事を始めたときあたりの知識で止まっているので、

細胞学を含め、再び微生物学も勉強しようかなと手に取った本として


いつも紹介しているけれども、


星屑から生まれた世界 - 株式会社 化学同人

亜鉛を含む農薬の作用をI-W系列から考えてみる


とあともう一冊として



青土社から出版されている微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公-がある。


微生物学というような専門書ではなく、上記のような読み物から読み始めるのは、

研究の第一線で活躍している方が領域のことを物語として書いてくれているため、

今後読むであろう専門書でどこを読むべきであるかの道しるべとなってくれる。


著者の思想がベースとなるので、

広い微生物学の領域で内容に偏りができてしまうけれども、

著者も科学者であって中立を維持しようとしているので良しとする。


今回紹介したような本は極力大学レベルの教養を必要としないように書いてくれている感はあるけれども、

化学系の基礎教養は事前に頑張ってある程度理解しておいた方が良い。




一冊目の本は今までさんざん紹介しているので今回は端折るとして、

二冊目の本も良書で数多くの得るものがあった。


得たものとして

・微生物の進化には遺伝子の水平伝播が大きく貢献していたのではないだろうか?

・現在生きる生物で類似性が高いタンパクの特徴

の二点で今回の話では触れないけれども、後者のタンパクの話題は院生の時に知っていれば楽だっただろうなというもの。


これから前者の遺伝子の水平伝播について触れることにする。




はじめに遺伝子の水平伝播をWikipediaから抜粋してみると、

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遺伝子の水平伝播は母細胞から娘細胞への遺伝ではなく、個体間や他生物間においておこる遺伝子の取り込みのこと。生物の進化に影響を与えていると考えられる。

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遺伝子の水平伝播 - Wikipedia


生物学を専門として勉強していない方が遺伝と聞いたら何をイメージするだろう?

おそらく、母と父がいて、各々の親から遺伝子を半分ずつ頂いて子が生まれる。


子の特徴は各々の親の特徴を引き継いでいて、

受精時の遺伝子の組み合わせや遺伝子の突然変異によって親には見られなかった特徴を子が持っていることがある。

遺伝 - Wikipedia


遺伝と遺伝子がごちゃ混ぜな文章になってしまったけれども、

全体的にはこんな感じではなかろうかと。




話は戻って、遺伝子の水平伝播だけれども、


F1種子からタネ採り出来ないって本当?


親(上の図ではP)から子(上の図ではF1)への遺伝子の移動や、

細胞分裂で増殖する微生物の分裂時に元の細胞を親として、新たに生まれた細胞を子として遺伝子がコピーした時を垂直に見立てて、

親子関係がない遺伝子の移動を水平伝播という。


今まで挙がった内容だと、


情報を共有すれば集団は強くなる


細菌のプラスミドによる遺伝子の移動がある。

菌と細菌について


プラスミドは手っ取り早く他の細菌が獲得した遺伝子を獲得する手段で便利だけれども、

細菌の増殖スピードが落ちてしまうという欠点があって、

実験の際にプラスミドを取り込んだ細菌の培養をする際に目的の個体数になるまで増殖するのが遅くなって困る。


増殖が遅くなるのは生態的に非常に不利なわけで、

プラスミドとして取り込んだ便利な機能(耐性とか)が不要となった場合、

プラスミドを取り込んでいない細菌の方が優位になる。


冒頭の本で挙がったもう一つの遺伝子の水平伝播として、

(出版時では)決定的証拠はまだ見つかっていないけれども、

死んだ細菌で膜の崩壊の際に飛び出た遺伝子の断片を他の細菌が取り込むというもの。


微生物、特に細菌で、

意図的に遺伝子を取り込んだり、不要になった遺伝子を吐き出す機能なんて存在していたら恐ろしい。


どんな抗生物質を開発しようとも、

対象となる微生物群はすぐに耐性を獲得しつつ、

細胞内の遺伝子の量はプラスミド程増加しないわけで、

新たに遺伝子を取り込んだ際の増殖の低下もほぼ発生しないだろう。

※プラスミドは大きい

DNAの切り貼り


これを踏まえた上で、

農薬の開発と病原菌の耐性獲得、再び農薬の開発への記事を読み返してみると、


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耐性菌は万能ではなく、

微生物は使用しなくなった耐性を捨てることもあるので、

相当前に耐性の問題で使用されなくなった農薬が案外効くということもあるはず。

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上記の記述がただの楽観視となってしまう。

水平伝播による新たな形質の獲得が増殖の面で不利にならなければ、便利な機能を捨てることなく存在し続けることになるからだ。