前回、美味しい米を収穫している長野県の栄村にある小滝集落を訪れ、水田の周りがどのような環境であるか?を見て回った。
その中で、
水田の上流にある山の土が赤土の粘土地で、玄武岩のような特徴の黒い石がごろごろとしていた。
更に
水田へと流れる湧水の川底にも赤土が堆積していた。
これらの話を踏まえた上で、本題の水田を見てみる。
この地域で一番成績が悪い土はないか?ということで、昨年は秋落ち、今年は他の水田と比較して収量がかなり低い水田を教えてもらった。
※秋落ちとは収穫前に急激に株が弱り、収量が激減、もしくはゼロになった水田のこと
ここがその水田で、収穫までは行き着けるけど、分げつ数は少なく、今の時点でも収量が少ないことが予想できる。
※分げつとは株の根元から新しく茎が発生する現象で、分げつ数が多ければ太い株となる。
不調な水田はここだけで、この水田の両隣は、
このように各々の株がしっかりとしている。
こちらの水田を管理している方は、秋落ちは秋あたりで肥切れをおこし、収穫まで持たないから発生すると考えていたが、他の水田と同じように肥培管理をしているので、肥切れはしっくりこない。
秋落ちというのは老朽化水田から発生するというのが現在の定説だけど、この水田の履歴を確認すると、老朽化水田も肥培管理によるものだから、局所的に収量が低いのはしっくりこない。
※老朽化水田の土では作物にとって有効な鉄が不足している
鉄が不足していれば、光合成による生産量や病気に対する耐性は激減する。
専門家や学者を呼んでこの水田のことを質問したけれども、誰もがこの水田での秋落ちの原因はわからないという返事だったらしい。
何かこの水田だけやってないことはないか?と質問してみると、そういえば、この水田だけ山の土で客土していないという返事が返ってきた。
※客土とは、土を他所から持ってきて、畑の土と混ぜること。土壌改良の一種
どうやらこの水田一帯は基盤調整で土を剥いで、砂っぽくなったところらしい。
両隣の水田は客土していて、秋落ちしているところだけ客土していないとのこと。
この話が挙がった時に小滝集落で一番年配の方から、この地域では冬に山に入り、
赤い粘土(写真の上部にある茶色い箇所)を集めてきて、雪が降っている時期だからソリに載せて水田まで運んで、お礼肥えの一貫として赤い粘土を入れていた。
※現在は作後に入れているわけではないみたい
親父がそうしていたから、それを引き継いだと。
今はトラックで運ぶけどねと付け足した。
この話に対して他の方も火山灰由来の粘土を集めて、水田に入れてるということも挙がった。
粘土鉱物といえば、提案している基肥設計で最重要な資材として挙がる。
せっかく重い山の土を持ってくるんだったら、表層の腐植がある土を持ってくるのが普通だけど、粘土を選択していたということが驚きだ。
※追記
ここの地域の水田は昔から水持ちが悪かったため、赤土粘土で客土していたそうだ。
腐植層が50cmもある黒ボク土なので、水持ちが悪いのは当然か!
※小滝集落は厚層の黒ボク土に分類されている
砂地っぽい水田では粘土を入れることによって水持ちを良くするため、土壌改良の一貫として粘土を入れることが多い。
しかし、お礼肥えのように粘土を入れ続けている話ははじめて聞いた。
※もしかしたらどこの地域でもやってたかもしれない
この地域は苦鉄質の地質で山の土はマグネシウムと鉄が多いことが幸いして、稲作にとって重要な有効な鉄が多すぎす少なすぎずな状態をキープしていたのかもしれない。
最近はお礼肥えとして粘土を入れているかは確認していないけれども、
水田に流入する水に鉄が多いだろうから、客土をし続けるという必要はなさそうだ。
土が露出した整備されていない水路が米の品質を高めている可能性も十分に考えられる。
水田を管理している方が秋落ちの水田の収穫が終わったら客土を試してみるとのことだったので、来年、秋落ちが発生しなければ、米の美味しさの秘密の一要素を見つけたことになる。
追記(2018年2月3日)
他にわかったこと
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