植物体内でのα-リノレン酸の使いみちの記事までで必須脂肪酸のリノール酸とα-リノレン酸についてを見てきた。
α-リノレン酸についてもう少し見ておきたい事があるけれども、その前に、
食用油の酸化について触れておきたい。
食用油が古い時に酸化したという表現を使う事が多いけれども、この酸化とは一体どのような反応なのか?
単純に、
Ben Mills - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, リンクによる
不飽和脂肪酸のオレイン酸の二重結合の箇所がなくなり、
パブリック・ドメイン, リンク
同じ炭素鎖の長さの飽和脂肪酸のステアリン酸になる、β酸化が続くということではないだろう。
というわけで食用油の酸化で検索をしてみた。
食品脂質の様々な劣化反応 - あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センターニュース 2020 年 6 月号で化学反応付きの説明があったので、この内容を参考にして話を進める。
食用油が古くなった時の酸化は自動酸化と呼ばれ、不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸やα-リノレン酸等)等で起こりやすく、
英語版ウィキペディアのEdgar181さん - en.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる
二重結合の間の炭素(上の図では、9と12の間にある下向きの角)に付与されている水素(図では表記を省略している)が熱や光の影響で引き抜かれてラジカルになる。
※エネルギーを持つ箇所が水素で蓋をしていたが、何らかの拍子で蓋が外れ、他の物質にちょっかいを出してしまう状態になったというイメージ
ラジカルになったものが酸素と更に反応して、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)という状態になり、この物質は不安定なので、悪臭の原因の低級アルコール、アルデヒドやケトンになる。
この反応で生じた悪臭はオフフレーバーと呼ばれるらしい。
オフフレーバー#油脂のオフフレーバー - Wikipedia
脂肪酸から水素の外れやすさは多価不和合脂肪酸の多価の数字が大きい程酸化しやすいので、オレイン酸、リノール酸とα-リノレン酸であれば、α-リノレン酸が最も自動酸化しやすい食用油ということになる。
余談
今回の反応は人体内の脂肪酸でも生じるのではないか?と気になったので検索をしてみたら、脂質ラジカルと癌化等の疾患の話題があった。
山田健一 酸化還元反応および脂質ラジカルをターゲットとした検出と抑制 - Drug Delivery System 33―3, 2018