中性脂肪を構成するグリセロールはどのように合成されるか?の記事でエネルギーの貯蔵の役割を持つ中性脂肪がどのように合成されるか?を見てきた。
中性脂肪ことトリアシルグリセロールはグリセリン(グリセロール)と1〜3個の脂肪酸が付与した形になっていて、グリセロールと脂肪酸はどちらも糖から解糖系を経て合成されるので、中性脂肪は糖の余剰分を蓄積に回したという見方をすることができる。
エネルギー貯蔵の中性脂肪だけれども、生合成の次に気になることといえば、どのような反応で中性脂肪からエネルギーを取り出し利用するか?だろうか。
というわけで、今回は脂肪動員という現象について見ていくことにする。
中性脂肪はエネルギーの貯蔵であるため、そう簡単に消費されるという事はなく、他の効率的なエネルギー源である糖等が枯渇した時に脂肪が利用され始める。
反応は
グリセリン(グリセロール)から一つずつ脂肪酸が切り取られて、上の図のトリアシルグリセロールであれば、3個の脂肪酸と1個のグリセロールになる。
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グリセロールは中性脂肪を構成するグリセロールはどのように合成されるか?の記事で、解糖系においてブドウ糖からジヒドロキシアセトンリン酸を経て合成され、この合成は可逆的な反応であるため、逆向きの反応で再び解糖系に入りATPを生み出す。
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脂肪酸の方はβ-酸化と呼ばれる過程で多くのATPを生み出すクエン酸回路で利用できるアセチルCoAに変わる。
β酸化は複雑は反応なので要約すると、
上の図の脂肪酸の右端のカルボキシル基(COOH)に
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補酵素A(CoA)が付与され、
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アシルCoAになる。
上の図のRには様々な長さの炭素鎖が入る。
このアシルCoAを数ステップ と再度CoAが関与する事によって、炭素鎖から炭素二個分が切り離され、少し短くなったアシルCoAと
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アセチルCoAが生成される。
※アセチルCoAの左端に炭素が二個あり、その横のSから補酵素A(CoA)の箇所になる。
アセチルCoAはクエン酸回路に入り、大量のATPを産生する。
脂肪動員において、補酵素A(CoA)が重要な働きをすることがわかる。
ここまで見てきたら、ダイエット界隈で時々見聞きするケトン体について触れる事ができるようになるが、それは次回に触れることにしよう。
- 続く -
補足
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脂肪の代謝とその調節 ―からだのエネルギーバランス― 兵庫県立大学 理学部 大学院理学研究科