以前、黒ボク土は良い土というイメージが共有されているで黒ボク土は良い土というイメージで話されることが多いと記載した。
確かにボクボクと鳴る土は空気を含んでいるからこそ鳴る音であるはずで、排水性と程よい保水性を重視する栽培にとっては良い土となるだろう。
だけど、この話にはずっと違和感があった。
学部生の頃の土壌学の講義で黒ボク土というのは大変厄介な土で、黒ボク土でまともな栽培をするために国家レベルで大変苦労したという内容があった。
主な理由はアルミニウム障害で、このアルミニウム障害をどうにかするためにリン酸カルシウムの施与で土から溶脱するアルミニウムの害を軽減させた。
黒ボクが良い土と認識されているのは、アルミニウム障害を回避できたからなのか?
実は障害が発生しない黒ボク(地域による差)があったからなのか?
ここらへんがどうなっているか?が気になってきたので、黒ボクについて深く調べることにした。
まず黒ボクの形成だけど、玄武岩質的火山灰の土壌で暑すぎず植生があって、有機物がゆっくりと堆積した地域で発生するということになっている。
※暑すぎずということを当サイトでは訳あって冷涼と表現している。理由は大陸の紅土を中心にして考えているため
もうすこし細かく見てみると、有機物が蓄積するためにはアルミニウムを含む粘土鉱物の助けが必要で、黒ボク土にもアロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土という分け方がある。
ここでいうアロフェンというのは非晶質の粘土鉱物という扱いで、形態は塊(中空球)状となっている。
CECは30〜135と高め
アロフェンはAECの時に話題に挙げた。
非アロフェンというのは2:1型粘土鉱物で、以前紹介したベントナイトあたり。
2つの粘土は
(農文協 作物はなぜ有機物・難溶解性成分を吸収できるのか 135ページを参考にして作成)
上の画像のようなイメージで描かれることが多い。
アロフェンは一旦置いといて、ベントナイトは玄武岩質的な火山灰が水による変成作用で生成された含水鉱物であるため、非アロフェン質黒ボク土が玄武岩質的な火山灰から形成されているという話と一致する。
続いて、アロフェンとは何なのか?を探ってみる。
はじめにアロフェンが何から形成されているのか?を調べてみたところ、玄武岩ガラスの長期溶解速度の推定 : 富士火山地域の例という論文が見つかり、
論文中には下記の記載があった。
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主な一次構成物質は、火山ガラスであり、二次鉱物はアロフェン、ハロイサイトである。この風化の順序は火山ガラス→アロフェン→ハイロサイトである。
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論文を読み進めると、アロフェンが生成される化学式の記載があった。
2NaAlSi3O8 + 2H+ + (n+9)H2O → 2Na+ + Al2O3SiO2nH2O + 5H4SiO4
パブリック・ドメイン, リンク
NaAlSi3O8が曹長石(ナトリウムを含む長石:上の写真はナトリウムを含む斜長石)
Al2O3SiO2nH2Oがアロフェン
H4SiO4は可溶性のケイ酸
この式だけ見ると黒ボク土形成は玄武岩ではなくても良いのでは?というところだけど、鉄も黒ボクの形成にとって重要という記述がされている本をどこかで見た覚えもあるし、アロフェンも玄武岩質的火山灰ということにしておこう。
これらの内容を前提として、黒ボク土の話に突っ込んでいくことにしよう。
-続く-