黒ボク土は本当に良い土なのか?前編で黒ボク土には非アロフェン質とアロフェン質の二パターンあることを記載した。
(農文協 作物はなぜ有機物・難溶解性成分を吸収できるのか 135ページを参考にして作成)
アロフェン質はその名の通り、アロフェンという塊状の粘土鉱物が主体となり、アロフェンに腐植が結合する形で成り立っている。
アロフェンの化学組成はAl2O3SiO2nH2O
一方、非アロフェン質は2:1型粘土鉱物が主体となっている黒ボク土で、2:1型粘土鉱物といえばモンモリロナイトがある。
※モンモリロナイトはベントナイトという鉱物群の主成分の粘土鉱物
モンモリロナイトの化学組成は(Na,Ca)0.3(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2O
どちらも玄武岩質的火山灰由来の粘土鉱物として扱われる。
※2019年10月7日追記
流紋岩質火山灰由来であってもモンモリロナイトは含まれる
黒ボク土について再び論文検索をしてみると、非アロフェン質黒ボク土とフィールド科学に魅せられて 肥料科学,第29号,1~62(2007)という生涯黒ボク土の研究に捧げた方の文書があった。
この論文を読むと、黒ボク土が如何に栽培が難しいか?という内容から、pHやCECの化学的要素を踏まえた特徴が書かれており、アルミニウム障害についての記載もあった。
これらの内容は深くなるので省略するとして、黒ボク土の活性アルミニウムや分布の話を抜粋することにしよう。
黒ボク土での栽培に当たって避けては通れぬこととして、土壌pHが酸性になった時に生じる活性アルミニウムの問題だろう。
活性アルミニウムは腐植と強く結合するといったメリットがあるけれど、植物の根の伸長を止めてしまうという毒性もある。
これに対し、アロフェン質黒ボク土の活性Al量は4.7-5.7%と非アロフェン質黒ボク土の1.4-2.2%に比べて,2-3倍も高く,しかもアロフェンに起因するAlが大半を占めると記載されている。(21ページから引用)
※深さ別の検討も記載されていたがここでは触れないでおく。
どちらの黒ボク土であっても活性アルミニウムの問題が発生するけれども、それはどちらもアロフェンの影響が大きいとある。
続いて分布だけど、
(18ページから引用)
この地図はアロフェン質(緑)と非アロフェン質(赤)の分布を表しており、アロフェンは火山が盛んな地域に局所的に広まっているのに対し、非アロフェンは二箇所程局所的に集まっている箇所はあるけれど、それ以外は広く分布しているように見える。
本題に戻って、黒ボク土は良い土というイメージで共有されているのは本当なのか?だけど、私の今の拠点が京都で、上の地図でいうところのちょうど真ん中あたりになる。
関西は目立った火山がほぼなく、全体的に非アロフェン質の2:1型粘土鉱物を主体とした黒ボク土で形成されている。
黒ボク土の厄介な点を改めて挙げてみるとアルミニウム障害が発生しやすいということだったけど、非アロフェン質の黒ボク土の場合、アロフェン質と比較してアルミニウム障害が発生しにくい。
※他にも厄介な点はあったが回避可能なので省略する
黒ボク土に限らず極端な砂質やガラス質土壌でない限り粘土鉱物はあるので、pHを酸性にし過ぎると活性アルミニウムの問題は生じる。
まとめると、関西圏において黒ボク土では、昔から火山灰の風化土壌程黒ボク土のデメリットは少ないと判断できるため、黒ボク土が良いというイメージが広がったのは地域によるものではないだろうか?と予想できる。
最後に補足だけど、
(16ページより引用)
黒ボク土のCECとAECの図があったので載せておく。
どちらもpHを高めるとCECが上がる。
AECに関してはアロフェン質のみpHの影響がある。
これはおそらく黒ボク土に限らずだけど、肥効を高めたまま経費を削減したければ、栽培中に下がるであろうpHの減少量を抑えるような仕込みはしておいた方が良いね。
追記
関西圏の黒ボク土が栽培にとって理想に近い土だとするならば、京都で良い土って北部に少しあるだけなのね。
関連記事