廃菌床の話の時に下記のような意見が挙がった。
廃菌床を使った時に障害が発生することはないのか?
答えは廃菌床の質によって深刻な障害が発生することがあるというところだろうか。
深刻な障害というのは窒素飢餓だろう。
ここでもう一つ話題に挙がるのが、最近のキノコ栽培の培地はC/N比が低いコーンコブだろう?
コーンコブで窒素飢餓が発生するわけがない。
というところだろうか
コーンコブはトウモロコシの芯由来の有機質の成分で、C/N比の考え方からだと窒素飢餓は発生しないとされる数値
C/N比の数字だけで判断しているのであればコーンコブで窒素飢餓が発生しないことになるけれども、見るべきところは数字ではなく、微生物(ここでは糸状菌)が作物よりも優勢であるかどうか?だろう。
糸状菌が優勢であれば、糸状菌の方が養分吸収の効率が作物よりも高いわけで窒素飢餓が発生する。
この話を踏まえた上で、廃菌床についての現状を見ていくことにしよう。
キノコ栽培を終えた直後の廃菌床というのは、上の写真のように白い菌糸(おそらく根状菌糸束の断片)が所狭しと入り込んでいる状態のことが多い。
一つの培地でキノコ栽培を止める目安が、培地からキノコが生え尽くしたからではなく、培地全体に菌糸が回った時に止めるらしく、キノコと培地の関係で言えば、キノコはまだ培地の資源を使い尽くしていないことになる。
キノコといえば白色腐朽菌(担子菌)に分類される糸状菌である。
キノコの栽培者はまだまだキノコが優勢な段階で培地の使用を止める為、この状態のものをそのまま土と混ぜ込んだら、担子菌が優勢な状態が形成される可能性がある。
となると、培地の成分がC/N比低めだろうが、糸状菌と作物の養分の競合が発生してしまうため、冒頭にあるように作物は糸状菌に養分吸収の競合で負け窒素飢餓が発生する。
ミネラルの吸収で負けると作物は弱体化するため、虫や病気に対して弱くなることに繋がる。
廃菌床を堆肥として利用する場合は、栽培後に集めた廃菌床を追加で発酵処理しておく必要がある。
- 続く -
補足
菌は耕起に非常に弱い為、廃菌床を土と激しく混ぜ込むと糸状菌の活性は抑えられるけれども、菌が好む資材が土に入る為、資材の組み合わせによっては他の糸状菌が活性化する可能性は十分にあり得る。
補足2
キノコの栽培の終了直後の廃菌床を土に混ぜたことがあるが、季節によって畝間にたくさんのマッシュルームが生えたことがあった。
写真が手元に残っていなくて残念だ。
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2022年6月9日追記
当記事を読んだ方がSNSに菌床は堆肥ではない。嘆かわしい。といったニュアンスで投稿している方がいたので、堆肥とは何かを整理してみた。
堆肥とは落ち葉や家畜糞等の有機物資材を微生物の作用によって分解させ腐熟させたものという事が一般的であるが、時々完全分解したものという説明を見かける。
完全分解というのは化学的に水、二酸化炭素や窒素ガスになることであるので、肥料としての実態があること自体がありえない。
なので、完全分解 = 腐熟と捉えることにする。
腐熟というのは、認識に誤りがなければ、フミン酸等の腐植酸を形成することであるため、木質資材由来の菌床が糸状菌により腐植酸を形成するので、菌床は堆肥の定義から外れない。
SNSで菌床は堆肥ではないと主張した方は堆肥という言葉をどのように捉えているのだろう?