先日紹介した共立出版のるキノコとカビの生態学という本で、倒木が土に還る際の後半で白色腐朽菌とトリコデルマという菌が競合を始めるという内容が記載されていた。
この話を紹介する前にトリコデルマについて触れておくと、
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トリコデルマ属は、子嚢菌門ボタンタケ科に属する菌類で、森林土壌中や落葉、枯れ木に生息するごく普通の菌類である。落ち葉や枯れ木を分解する腐生的な面もあるが、菌寄生菌としての面も併せ持つ
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と上記の本の98ページ目に記載されていた。
菌寄生の個所を更に読むと
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このカビの菌糸は抗生物質を生産してシイタケ菌糸の生長を阻害するだけでなく、シイタケの菌糸に取り付き、菌糸分解酵素を分泌してシイタケ菌糸を溶解させてしまう
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と同ページに記載されていた。
シイタケというのはリグニンを分解できる白色腐朽菌に当たり、トリコデルマはセルロースは分解できるけれども、リグニンは分解出来ないので、シイタケが頑張ってリグニンの防壁を突破した後にトリコデルマがシイタケの菌糸を溶解させて木材の内部の栄養を取るという関係になる。
これを木質系の堆肥の製造に当てはめると由々しき問題となる。
この白色腐朽菌とトリコデルマに関して、上記の本で興味深い実験の結果が紹介されていた。
2種類の菌を同じ環境で培養する際、培地に入れる成分によってどちらの菌が優勢になるか?という実験があった。
いくつかパターンがあったがそれは上記の本を購入して読んでもらうとして、一番興味深いものをピックアップすると、培地に硫酸アンモニウムを増やすとトリコデルマの方が優勢になった。
というものがあった。
硫酸アンモニウムといえば、普段は硫安と呼ばれる水溶性の非常に効きの速い窒素肥料で、本の中では窒素源として扱われていた。
すぐに使用出来る窒素源があるとトリコデルマは優位に立てるらしい。
これを拡大解釈して、
高C/N比の木質系の堆肥の製造の際に、窒素源として牛糞や鶏糞を混ぜておくという話を良く見かける。
先程の話題を当てはめると、家畜糞は未熟の際は尿素やアンモニア等の速効性の窒素、熟成が進むと上記の窒素は減り、硝酸塩の形の速効性の窒素が増える。
どちらにしても速効性の窒素源が増えるため、木質資材の分解において、本当はリグニンを分解して欲しいところ、リグニンを分解する菌を弱めて、カロリー分を分解する菌を活性化させてしまう。
家畜糞に含まれる窒素源が硫安と同様の働きをするならば、木質資材に窒素の補給として家畜糞を混ぜるのはバットノウハウとなることが分かる。
この話を読んで挙がる反論として、高C/N比の資材の窒素源はどうするんだ?というもの。
それはキノコ栽培やそこらにいるキノコを徹底的に観察すればいい。
窒素源の概念が必要かどうかの判断ぐらいは出来るだろう。
今回紹介した本では、窒素固定ができる菌の話題にも触れていた。
土壌微生物の中で窒素固定が出来る菌の報告は結構ある。
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