前回の免疫の向上には水溶性食物繊維が重要な役割を担っているはずに引き続き、
再び名古屋大学出版会から出版されている糖鎖生物学 生命現象と糖鎖情報で興味深い話があったので紹介する。
今回の話を始める前に糖鎖について整理しておくと、
お茶で風邪予防の仕組みを見るでウィルスが細胞に感染する時、
細胞の表面にある糖鎖というものをウィルスが認識して感染すると記載したけれども、
糖鎖は病原体の感染だけではなく、体内の様々な情報のやり取りで活用されている。
この糖鎖だけれども、
こんな感じで直鎖や分枝して、枝のような形になっている。
レクチンというタンパクがこの糖鎖を認識して、体内で何らかの情報のやり取りをしている。
ちなみに糖鎖を構成する糖は、グルコース、ガラクトース、フルクトース等の単糖の他に、
Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる
アセチルグルコサミンのようなアミノ基をもった糖(アミノ酸?)等もある。
情報のやり取りをする際は、枝分かれしている先端(上の図では左側)の先にどのような糖が配置しているか?が重要になり、上の図の糖鎖では
パブリック・ドメイン, リンク
シアル酸という炭素数が多い糖が位置している。
このシアル酸が感染(免疫を含む)や細胞のガン化に何らかの影響があるがそのことはここでは触れない。
糖鎖と糖鎖の先端にシアル酸という内容を基にして、上記の本に記載されている内容を紹介する。
前提の知識として、シアリダーゼという酵素があり、この酵素は糖鎖からシアル酸を切り離す作用がある。
この作用により毒素の受容体を露出させる機能がある。
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ウェルシュ菌のシアリダーゼは、ガス壊疽を起こす主要病原因子であるアルファ毒素の未知の受容体あるいは結合部位を露出すると考えられ、毒素の効果を大きく高める。(途中省略)他の多くの菌についてもシアリダーゼが、栄養源としての遊離シアル酸の供給、細菌の宿主上皮表面への接着促進、毒素効果や病原性の増大、免疫回避、バイオフィルムの形成に関わっている。
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※名古屋大学出版会 糖鎖生物学 生命現象と糖鎖情報 277ページより一部改変して抜粋
各用語に触れると、ウェルシュ菌は腸内細菌叢の時に悪影響の方の細菌として登場した。
免疫回避というのは、インフルエンザ菌(ウィルスではない)において、シアリダーゼによって糖鎖から切り取られた遊離シアル酸を菌表面に纏うことで補体(免疫の一種)からの耐性を得る。
バイオフィルムについては植物の根と枯草菌のバイオフィルムの記事で触れた。
とりあえず、ここからわかることとして、腸内細菌叢でウェルシュ菌を優勢にさせないことが第一歩だろうということ。
※今回の話は細菌だけれども、ウィルスの感染でも上記の内容は重要であるらしい。
ここでオリゴ糖の摂取が必要になるわけか。
オリゴ糖といえば、希少糖コージビオースの記事で麹によって希少なオリゴ糖であるコージビオースが生成され、この糖が腸内細菌叢を改善するという内容を見た。
これが免疫向上の為に発酵食品を摂取すれば良いという話題の根拠の一つになるのだろう。
ここで一つ注意が必要で、
二年ものの味噌を買ったの記事で触れた内容で、安い市販の味噌は脱脂された大豆を原料にして発酵している。
脱脂される際に微量要素も減るわけだから、栄養価は下がっている可能性がある。
そもそもの話で、昨今の栽培方法で土壌が劣化していて原料の大豆自体の栄養価も下がっている可能性がある。
発酵食品であれば何でも良いというわけではなさそうだ。
腸内細菌叢でのシアル酸の資化については次回の記事に続く。
-続く-
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