必須脂肪酸のα-リノレン酸の働きを見てみるまでの記事で必須脂肪酸であるリノール酸(オメガ3)とα-リノレン酸(オメガ6)の働きを見てきた。
脂質から連想される一般的なイメージに肥満があるが、必須脂肪酸の働きから肥満は連想されず、不足すると日常生活で大きな影響を受けることが分かった。
それを踏まえた上で、必須脂肪酸のリノール酸の働きを見てみるの記事の末尾で触れたリノール酸の過剰摂取の話題について触れてみる。
古い内容であるが、日本脂質栄養学会からリノール酸摂取量の注意が発表されていた。
「リノール酸摂取量の削減および油脂食品の表示改善を進める提言」について - 日本脂質栄養学会
リノール酸を摂り過ぎると、脳血管系疾患等の症状が発生する可能性があり、日本人の食生活(特に育児用の粉ミルク)でリノール酸が過剰に含まれているからリノール酸を減らす必要があるという記載がある。
リノール酸は人体にとって重要な働きを示す脂肪酸なのに、何故上記のような内容が発表されているのだろうか?
気になったので必須脂肪酸周辺の代謝を改めて見てみることにした。
守口徹等 哺乳動物における必須脂肪酸の役割 - 生化学 第 92 巻第 5 号,pp. 619‒625(2020)に興味深い話が記載されていた。
リノール酸からアラキドン酸(ARA)が生合成される経路とα-リノレン酸からドコサヘキサエン酸(DHA)が生合成される経路は競合する。
つまりはリノール酸の過剰摂取はARAの合成が盛んになり、DHAの合成が抑制される。
DHAは脳内のリン脂質の合成にとって重要である為、脳血管系疾患の話題に繋がっていく。
DHAの合成の抑制は乳幼児の脳の発達に大きな影響を与えるので、粉ミルク中のリノール酸の量は注意が必要なのだろう。
リノール酸に対して、α-リノレン酸の摂取量が少ない事が今回の問題を引き起こす事になるので、α-リノレン酸やDHAの摂取量を意識すれば色々と改善するのだろう。