土壌中でタウリンを資化する微生物は存在するか?までの記事でタウリンについてを調べていたのだけれども、その時に興味深い研究報告を見かけた。
内容はバイオマスエネルギーの産業廃棄物である硫酸リグニンを水溶化処理したものを植物に与えたら、成長が促進したというものだ。
更に詳細に触れておくと、植物の成長促進の要因はアルカリ性土壌における鉄欠乏の解消に因るものであるらしい。
※アルカリ性土壌での鉄欠乏については施設栽培で軽微な鉄欠乏の症状を見逃すなの記事に記載がある。
この内容は大陸のアルカリ性土壌に限らず、
日本の施設栽培にとっても朗報の話題であるので、硫酸リグニンの詳細を見ていくことにする。
硫酸リグニンは木材から化学パルプ化法という手法で得られた単離リグニンを指し、
※図 高野俊幸 リグニンの利用に向けて - ネットワークポリマー Vol. 31 No. 5(2010)216ページより引用
リグニンにスルホン酸塩基(-SO3M Mには何らかの陽イオンが入る)が付与された構造になっている。
この硫酸リグニンを水酸化ナトリウムで高温処理すると、メトキシ基(-OCH3)がヒドロキシ基(-OH)に代わり水溶性化する。
ここで一つ心配になるのが、スルホン酸こと硫黄を含んだ有機物を土壌に投入することだろうか?
もし、土壌中でスルホン酸基が分離することがあったら、硫化水素ガスの発生要因を蓄積することになってしまうため、後々大変な事になりそうだ。
ただ、投入するものにリグニンの構造が含まれている為、硫酸リグニンが重合して、酸度の強い腐植酸になる可能性も十分に有り得るわけで、そうなれば難溶解性のリン酸にも作用することになり、リン酸蓄積問題も同時に解決するかもしれない。
今回挙げた懸念点は土の物理性が改善すれば、無視できる範囲になるはずで、硫酸リグニン自体に物理性の改善の要素はあるわけで、あまり気にする必要はないのかもしれない。