イワシのアミノ酸成分表を見てみるの記事で、イワシのアミノ酸について触れた。

この内容を踏まえた上で、二瓶直登著 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 - 福島農総セ研報 2: 21-97 (2010)の内容を読み直してみることにした。

上記の報告は各作物に対してアミノ酸を施した時の挙動になっていて、有機質肥料を施肥する時の参考になる内容が含まれている。


早速だけれども、たくさんある内容のうち、19ページに記載されている内容をピックアップしてみる。

/*************************************/

イネの生育:(途中省略)根系発達については、グルタミン、アスパラギンでは種子根 も側根も生長は旺盛であった。アラニン、アルギニン、グルタミン酸では種子根は生長したが、側根の生長は抑制されていた。グリシン、アスパラギン酸、プロリン、イソロイシンでは種子根の生長がやや抑制され、その他ではアミノ酸では生長そのものが阻害された。特に、トリプトファンは根表面が褐色化し、側根が全く発生しなかった。

/*************************************/

と記載されていた箇所があった。


前回の記事のイワシのアミノ酸では、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンの順に多く、上記の内容に当てはめると、イネの初期生育(根を重要視している)の場合、全体的に種子根の生育が少し抑制され、側根は大きく抑制されることになってしまう。


11ページの有機物肥料の試験区分で米ぬか(50%) + 魚粉(50%)の組み合わせでは地下部はあまり生育せず、地上部は茂るような結果になっている。

この結果であると、懸念している年々増加する猛暑日の影響に対して弱くなってしまう。

※比較区である硫酸アンモニウムの試験区よりは発根している

これからの稲作は如何に土の保水性を向上するかになるはず


イネで最も発根に対して影響を与えた区が、


2259808_s


米ぬか(50%) + 菜種粕(50%)であった。


何故このような結果になったのか?

魚粉と菜種粕のアミノ酸の構成はどのようになっているのか?を知るために更に検索をしてみたら、横山咲等 有機質肥料施用による土壌中のアミノ酸濃度および組成の変化 - 根の研究(Root Research)27(2):35-41(2018)に辿り着いた。


上記の報告では有機質肥料の元素分析で米ぬか、菜種粕、魚粉(魚粕)のアミノ酸の構成が記載されていた。

グルタミン(Gln)とグルタミン酸(Glu)の差を見たかったが、ここはGln + Gluという表記であったため差を見ることができなかった。

光合成からアミノ酸の合成へ


イネの発根に関与するグルタミンとアスパラギン(Asn)に着目してみると、グルタミンはおそらく菜種粕の方が多く、アスパラギンは魚粉の方が多いように見えるが確定的ではない。




もう一つ見ておきたいこととして、39ページの有機物添加後の土壌アミノ酸の表で各有機物を添加した後のアミノ酸の構成の変化だけれども、30日後に米ぬかと菜種粕のグルタミン(Gln)の相対的な量は増えたが、魚粉は一度増えて減るといった挙動を示した。


もしかして、これがイネの初期生育に影響を与えたのだろうか?


各作物のアミノ酸の反応と有機物肥料のアミノ酸の構成の変化は意識しておく必要がありそうだ。