最近よく聞く農薬でバリダマイシンAというものがある。
ネギやニラといった地上部だけカット収穫して、根を残して再生したところで再び収穫するような作物で、
カット収穫後に消毒という意味合いとして使用するという話をよく聞く。
話題に挙がったら可能な限り調べておくのが当サイトの方針なので、
今回も例外なくバリダマイシンAを調べておく。
はじめに構造を見ておくと、
バリダマイシンA Ⅰ.評価対象農薬の概要 - 環境省より引用
3個の六炭糖が炭素-窒素結合?とグリコシド結合で繋がっている。
作用機構は
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バリダマイシンA(バリダマイシン)は、グリコシド系抗生物質殺菌剤であり、その作用機構は菌体内でトレハロース分解酵素であるトレハラーゼの活性の阻害である。
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(バリダマイシンA Ⅰ.評価対象農薬の概要 - 環境省より引用)
と記載されている。
バリダマイシンAは菌体内のトレハロースの分解を阻害するということがわかったけれども、
菌、もしくは細菌が体内でトレハロースを分解できなかったら何が問題なのだろう?
これを知るためには菌がトレハロースをどのように活用しているか?を知る必要がある。
というわけで、
トレハロースについて調べてみる。
By Calvero. - Selfmade with ChemDraw., パブリック・ドメイン, Link
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トレハロース(trehalose)とはグルコースが1,1-グリコシド結合してできた二糖の一種である。(途中省略)高い保水力があり、食品や化粧品に使われる。(途中省略)還元基同士が結合しているため還元性を持たない。
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還元性については複雑なので今は触れないでおく。
トレハロースと細菌について検索してみたら、
微生物の圧力ストレス応答とトレハロースの役割 高圧力の科学と技術 Vol.9、No.3 (1999)
という特集記事に行き着いた。
1999と古い論文ではあるけれども、
最初の取っ掛かりととしては良いだろう。
酵母を対象とした内容になっているが、
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トレハロースは耐乾燥、耐凍結、耐熱、耐薬品、耐圧など様々なストレスに対する耐性を付与する物質であることが知られている。酵母類に熱ショックや浸透圧ショックを加えた場合も細胞内に誘発されることが知られている。以上のことから、トレハロースは細胞が物理的あるいは化学的なストレスにさらされた際に耐性を獲得するための保護剤の1つと考えられている。
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微生物の圧力ストレス応答とトレハロースの役割 高圧力の科学と技術 Vol.9、No.3 (1999) 202ページより引用 一部改変
細菌でも熱ショックや浸透圧ショックを受けた時にトレハロースが合成されて耐性を獲得すると仮定して、
冒頭のバリダマイシンAは菌もしくは細菌のトレハロースの分解を阻害することで殺菌剤としてどのような作用があるのだろう?
過剰蓄積で無駄なエネルギーを消費して増殖できなくなるとか?
バリダマイシンAは今回のトレハロースの分解阻害以外でも注目すべき点があるのだけれども、
話が長くなったのでその話は次回にしよう。
-続く-