前回、
冬の寒い時期の代謝が落ちる時期にたまった老廃物(毒素)に対してアブラナ科の野菜が有効だという話を良く聞く
という内容を記載した。
有効成分はイソチオシアネートと呼ぶらしい。
この話の背景には何があるのだろうか?
調べてみることにした。
いつものGoogle Scholarで検索してみたところ、
イソチオシアネートによるがんの化学予防の可能性 - 岡山大学農学部学術報告 Vol. 95, 87-91 (2006)
という要約されたものが見つかった。
10年以上前と古いけれども、
整理された内容は辿る上でありがたい。
文中ではイソチオシアネートをITCとしているので、
今回の記事中でも同様にITCとする。
イソチオシアネートは特異な官能基であるITC基(-N=C=S)を有する化合物の総称でいくつか種類がある。
このITC基の炭素原子の電子不足状態により様々な物質と反応しやすい。
文中ではパパイヤ(アブラナ科ではない)やキャベツでよく見られる(らしい)
ベンジルイソチオシアネート(BITC)を元に解説が進んでいる。
BITCはITC基のNにベンゼン環が繋がった構造で、
※図:イソチオシアネートによるがんの化学予防の可能性 - 岡山大学農学部学術報告 Vol. 95, 87-91 (2006) 88ページより引用
様々な物質(BITC自身も含む)と反応して、様々な作用を持つ物質へと変化する。
本題と直結しているのは図の3段目のグルタチオン(Glutathion)との結合と、4段目のチオール基(-SH)を持つタンパク質との結合なので、
この二つだけを見ることにして、
これらの反応を経て解毒酵素誘導作用を持つ物質となる。
※グルタチオンは以前、光合成周辺のこぼれ電子の回収屋として登場した。
解毒酵素については深いので今は触れないことにして、
BITCの他の作用を見てみると、
NADPH oxidaseに依存したスーパーオキシドの産生を有意に阻害するとのことで、
体内の活性酸素の発生を制御していることになる。
他にも排出周りの役割も記載されていたが、それは省略するとして、
今までの情報をまとめると、
菜の花を食べることで解毒できるという背景は解毒酵素を誘導することと、活性酸素の発生の制御からきているものだと言える。
健康効果を調べてきたけれども、
実際に知りたいのは植物体内でのイソチオシアネートの働きになるので、
次回は植物の方に目を向けてみることにしよう。
余談
ITCの一種で物質名にイソチオシアネートを含まないものがある。
By Klaus Hoffmeier - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
それはブロッコリに含まれるスルフォラファンで、
この物質によりブロッコリスプラウトが流行ったらしい。
関連記事