稲作でカリウムの施肥を減らして、二酸化炭素の排出量の削減に貢献の記事に引き続き、興味深い研究報告を紹介する。
紹介の前に研究報告の前提となる知識を整理しておく。
強力な温室効果ガスの一酸化二窒素の記事で記載したが、家畜糞等の硝酸態窒素が多い成分を土に投入すると、土壌の微生物によって二酸化炭素よりも遥かに強力な温室効果のあるガスが大気に放出される。
この作用を硝化というのだけれども、家畜糞施肥の硝酸態窒素の3割近くが硝化でロスしていたような気がする。
この内容を踏まえた上で、トウモロコシ根からの生物的硝化抑制物質を世界初発見 ―窒素施肥量を減らし地球を健康にする第一歩― | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCASの内容を紹介したい。
タイトルにあるように、
トウモロコシの根から硝化細菌の働きを抑える物質(生物的硝化抑制物質:Biological Nitrification Inhibition: BNI)が分泌されている事が発見された。
BNI物質をゼアノンと命名したそうだが、ゼアノンが硝酸態窒素が硝化によって損失することを抑え、自身で硝酸態窒素を積極的に吸収する。
家畜糞は牛糞で土作りをした時の弊害をまとめてみるとの記事で触れたが、自身の栽培を困難にするだけではなく、強力な温室効果ガスの排出により、広い範囲で栽培しにくい環境にしてしまう。
単純に家畜糞を使わなければ良いという事にしたいが、牛乳が体に良いと言われている限り、牛肉が美味しいと感じられている限りは家畜糞は出続け、糞詰まり問題から抜け出すことはできない。
栽培と畜産の未来のためにの記事で記載した通り、空いている土地に家畜糞を投入して、緑肥で封じる。
緑肥によって硝酸をタンパクの形に変え、鋤き込みによって土に還すという手順で硝化されにくい状態にしてから栽培を開始するというのが一番わかりやすい解決策になるはず。
とりあえず、美味しい野菜の栽培を目指していた方にあったことに記載したような自称ベテラン農家が一般的に求められている水準の技術者にならなければ何も解決しない。
オススメの読み物
バカにできない?肉の生産で出る温室効果ガス:東京新聞 TOKYO Web