小中学生、大学生や社会人の方に向けてプログラミングの話をしているのですが、
それに合わせて良い教材がないか?と本屋に行く度に楽しく読める本を探しています。
社会人・学生向けプログラミング教室でGoogleスプレットシートの拡張の勉強会を行いました
そんな中でとても素晴らしい本に出会い、
どうしても紹介したかったので、今回の記事を書き始めた。
一つ目は、
朝日出版社から出版された働きたくないイタチと言葉がわかるロボット(以後、イタチ本と略す)
二冊目が
東京大学出版会から出版された自動人形の城(以後、人形本と略す)
どちらも川添愛さんという言語学者の方が書かれた物語で、
人工知能を主軸として物語が進む。
他の人工知能本と大きな違いは、
物語の途中に高度な内容が記載されているにも関わらず、文章の読みにくさ、難しいと思わせる箇所がなく、
解説のページで実際の研究での課題が記載されている。
イタチ本のテーマは、
言葉の喋れるイタチたちがあまりにも働きたくないため、自分らの仕事を全て押し付けることができるロボットを開発しよう
という内容で、
イタチ以外にも様々な動物が現れ、個々の動物がそれぞれ自分たちが欲しいロボットを開発していて、
それらを組み合わせて何でも言うことを聞いてくれるロボットを開発するという話。
一方、人形本は、
何でも言うことを聞いてくれて、命令に従ってくれる人形はいるのだけれども、
主人公(11歳の王子)の周りには(猫にされた教育係と)人形しかいない状態で、様々な危機を乗り越えていく
という話。
イタチ本で言うことを聞いてくれるロボットを開発して、
人形本でそのロボットを実際に使ってみる
という一連の流れを体感することができる。
何故、言語学という文学の一種の学問の方が計算機科学のテーマを書いているのか?というと、
誰しもイメージする究極のロボットというものは、
ドラえもんのように会話が出来、独自で判断して解決策を提示する。
更には友達のように遊んだり、笑いあったりすることができるものがあると思う。
ここで重要な要因となるのが、
人の言葉を聞き取り、理解して実行に移す
といういわゆる自然言語処理というものが必要で、
ロボットの心臓部であるコンピュータは言語学の知見が必要となる。
話は冒頭に戻って、
何故、これからプログラミングを始めようとした方に高度なAI関連の本が良いか?というと、
人の言葉を理解して、人と同じように動くロボットがいたとしても、
文中の中でロボットは主人公の意図したように動いてくれません。
主人公はロボットを自由自在に動かすために、
ロボットの動きを良く観察して、的確な命令を出せるように練習します。
観察の際にロボットの規則を挙げ、
何故失敗したか?を徹底的にピックアップし、
ロボットに合わせるように命令文を変えていきます。
ロボットは今聞いた言葉を解釈することができるし、
過去に起こったことを学習として記録してロボットたちの間でインターネット的に共有はしているけれども、
人同士が話をしている時の暗黙な省略や背景まで判断することは出来ないため、
ロボットへの命令は徹底的に的確でなければなりません。
仕事として依頼を受けたプログラマだったら誰しも経験したことがあることとして、
非プログラマは物事の詳細を深く突き詰めることなく計画(要望)を挙げ、
プログラマはその要望をコンピュータに合わせて可能であるか?検討する。
プログラマは非プログラマの計画(要望)を機械が解釈できるようにプログラミングという名の人間の言葉から機械の言葉に翻訳して命令文を作成する。
アプリケーション開発が終了し、実稼働した後で挙がってくる不具合の報告でも、
非プログラマは目の前に起こった現象を自分の感じたとおりに伝えるけれども、
プログラマ同士では
どの画面でどのような操作をして、実際にどのような症状が起こった
という伝え方をする。
電話での不具合報告の場合にほとんど症状が解決しないというのもよくある話で、
電話には話し手が人特有の暗黙な認識にあまりにも依存しすぎてしまうため、
コンピュータ特有の命令の仕方とあまりにも相性が悪い。
ここで挙げたような話をイタチ本と人形本を通して体感することができる。
どちらの本も人の言葉を理解できるロボットの動きに翻弄される。
この本を読むことで、
最近流行りの人工知能が万能でないことがわかり、
万能でない故に人の仕事で抜群の効果を発揮する箇所もなんとなくイメージできるようになる。
※実際には人工知能は存在していなくて、計算機科学では機械学習と呼ばれている
人形本の方で特に記載されていることで、
人と人の意図の理解を基軸としてできる人とは?というテーマが記載されているが、
その内容が共感できることが多く書かれていて、
人工知能本やプログラミング本という認識だけでなく、
ビジネスでのコミュニケーション本としても秀逸だった。
できる人の話はここでは紹介しないので、
実際に手にとってこれらの本を読んでみてほしい。
物語そのものも面白いので、
専門書を読むといった意気込みがなくても良い本です。
改めて紹介
補足
川添愛さんは今回の本を出版する前にも、
オートマトンやチューリングマシンをテーマにした物語を書いていて、
オートマトンの方は前に読んだけど、その本も良い出来だった。