家畜糞による土作りの土から収穫した野菜の摂取は健康に繋がるか?までの記事で、土壌中の硝酸濃度(高EC)の状態で、植物にどのような影響があるのか?を見てきたが、更に何かないか?を調べてみることにした。
検索してみたら、名古屋大学のプレスリリースで植物の根の窒素栄養吸収を葉から調節するホルモンを発見-変動する土壌栄養環境への植物の適応のしくみ-という研究報告を見かけた。
要約すると、植物体のある根で周辺に硝酸イオンが不足している事を感知すると、感知した根から葉にその情報が送られる。
葉はその情報を元に他の根に硝酸イオンの吸収を高めろという命令を送る。
※命令は植物ホルモンを介して行われる
他の根が葉から硝酸の吸収に関する命令を受け取ったら、硝酸の輸送に関する機能(NRT2と呼ばれる)の発現を行う。
小俣達男著 硝酸イオン/亜硝酸イオンの能動輸送とその制御 - 化学と生物 Vol. 38, No. 3, 2000によると、詳細は端折るが硝酸イオン(NO3-)は陰イオン且つ自然界では低濃度であるため、体内では濃度勾配と電位勾配に逆らって能動的に硝酸イオンを輸送させる必要がある。
硝酸イオンを輸送する仕組みがNRT2に当たるわけだ。
ここで一つ疑問が生じる。
家畜糞による土作りで、ECが過剰になってしまった土壌において、おそらく植物の根は葉に対して、硝酸を吸収しろといった命令は送らないはず。
葉に硝酸吸収の命令が届かないということは、他の根の硝酸輸送の機能が高まる事はなく、根は積極的に土壌から養分を吸い上げる事はしない。
硝酸の吸収ももちろん水に溶けた硝酸イオンという形になり、根が水を吸い上げる仕組みを使って硝酸イオンを吸収する。
上記に挙げた硝酸輸送の仕組みは養分吸収に何処まで関わっているのだろうか?
NRT2は細胞内に硝酸を取り込む為の為のタンパクとされているので、吸水自体には関与しないのか?
根の養分吸収の仕組みが解明されていけば、秀品率は更に向上していくのだろうな。
イネになるが、窒素肥料過剰でイネの葉の色が濃くなるのはなぜだろう?の記事で紹介したアミノ酸の吸収に関する仕組みも重要になってくる。
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