食害虫防除としての草生栽培の可能性を探るまでの記事で植物の昆虫の攻防についての話題に触れてきた。
植物側の防御で有名なものとしてポリフェノールがある。
ポリフェノールは人体において苦味や渋みの要素になっていて、摂取すると反応性の高さから体内の活性酸素の除去という良い面もあれば、量が多ければ体内のタンパクに悪い影響を与えるという面もある。
それ故、ポリフェノール量が多いと渋みといった不快な味して感じてしまう。
ふと昆虫とポリフェノールの関係はどうなっているのか?と疑問になったので検索してみたところ、古い内容ではあるが、今野浩太郎 食べられまいとする植物と食べようとする昆虫の攻防 - グリシンの栄養阻害物質中和作用 - 化学と生物 Vol.34 No.9 1996という読み物に行き着いた。
昆虫体内でのポリフェノールの作用を見ると、食害を受けた植物体内にある酵素によって、
ポリフェノールが
※ポリフェノールはベンゼン環に水酸基(-OH)が二つ以上
反応性の高いキノンになる。
※この反応が植物と昆虫のどちらで起こるかの記載は見当たらない
※Rには様々な基が入る
※キノンはベンゼン環に二重結合の酸素が二つ
このキノンが周辺のタンパクのリジンと反応して、フェノール物質とタンパクの複雑な高分子化合物になり、昆虫にとって栄養価を低減させる。
おそらく昆虫内の消化液中のタンパクにも作用して、消化不良を起こしやすくする作用もあるはず。
これに対して、昆虫の消化液中に遊離したグリシンがあると、キノンとタンパクとの結合が阻害され、上記であったような作用が発生しなくなるそうだ。
※文中ではチョウ目の昆虫で話が進められている
植物が昆虫の食害に対する防御物質を、昆虫の方が更に無毒化するために進化した。
今回の内容に対して、植物側で通常よりも更に多いポリフェノールを合成すれば、遊離グリシンの影響以上に防御反応を示すことが出来るのか?
そうすると、昆虫側の方も更に多くの遊離グリシンを分泌するのか?
植物と昆虫の攻防の複雑さは本当に凄いものがある。
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