イネのいもち病から離れ、イネの根腐れについて見る事にする。
今年は大雨の日が多く、田から水を抜く事ができず根腐れが多発するのではないか?と言われている。
田から水を抜くというのは、
中干しと呼ばれる土表面がひび割れするまで乾かして、ひび割れの箇所から酸素を入れて根を丈夫にする過程を指す。
この中干しに対して一つ疑問がある。
植物の根への酸素の運搬とROLバリアという記事で触れたが、イネの根はROLバリアというものを発達させ、葉から吸収した酸素を根の先端まで運搬することができる為、抽水植物という水草として扱われている。
※イネは水陸両用の植物
冷夏等の気候条件によっては中干しをしないという話も聞くことから、どうやらイネの根腐れは違う要因であることは間違いない。
常陸太田地域農業改良普及センターの昨年の速報があったので読んでみると、水田という嫌気環境下で発生する硫化水素の話題に触れていた。
硫化水素といえば、あそこの水田から変な臭いがするよの記事で、土壌に溜め込んだ硫酸石灰等の硫酸塩が嫌気下において、土壌微生物が有機物を嫌気呼吸した際に発生するということを記載した。
ここで一つ細胞学の常識のような知識を挙げておくと、生物において硫黄は貴重な資源である為、使い回すように進化したというものがある。
いもち病の抵抗性を色素の観点から見てみるの続きでメチル化を見るで触れたSAMがまさに使い回しの例
となると、硫化水素が発生する由来となる含硫黄化合物が大量にあるのは不自然なわけで、肥料を疑う必要が出てくる。
硫化水素が発生する肥料を思い浮かべてみると、硫安(硫酸アンモニウム)、キーゼライト(硫酸苦土)、石膏(硫酸石灰)と家畜糞堆肥がすぐに思いつく。
硫化水素は鉄と反応しやすい為、光合成とおそらく酸素の運搬にも必要な鉄の吸収も難しくさせるはず。
水田は水漏れしにくい構造になっているが故に前作までの肥料が溜まりやすい。
更に生物の進化上、硫黄を積極的に吸収する仕組みがないわけで、溜め込んだ硫酸塩化合物を抜く有効な手段がない。
田植えの前に如何にガズの発生源を抜くかが米の品質の決定打になりそうだ。
追記
長雨による日照不足で葉から根に酸素の運搬が難しくなったということも十分考えられる。
もしくは水位が高くなりすぎて、葉の水没時間が長かったか。
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