水田からのメタン発生を整理する1で水田におけるメタンの発生と大気への放出を見た。
水田の還元層で発生したメタンのほぼ全てはイネの通気組織を経由して大気へと放出される。
他の経路は酸化層にいるメタン酸化菌(細菌)によって、メタンが消費されてほとんど大気には放出されない。
ここでふと頭に浮かんだ事として、植物の根への酸素の運搬とROLバリアの記事で触れたROLバリアがある。
イネのような抽水植物の水草は酸欠による根腐れを回避する為に、地上部で取り込んだ酸素を根の先端に行き渡らせる機能が発達している。
イネの根の先端付近の根圏、つまりは還元層まで伸長した根の周辺では、鉄が還元されてFe2+がたくさんある状態であるが、Fe2+は根にとって毒性が高いという特徴がある。
還元層に到達したイネの根の先端では酸素が放出されていて、この酸素によって鉄が酸化され、イネの根の先端には酸化鉄被膜という茶色の膜が形成されている。
ここで気になるのが、イネの根の根圏は酸素とメタンが豊富にあることになるので、ここにメタン酸化菌が集まるのではないか?ということだ。
検索をしてみたところ、イネの根から高活性CH₄酸化細菌を分離する | dSOILプロジェクトにたどり着いた。
イネの根にどれ程の量のメタン酸化菌がいるかはわからないが、イネの根からメタン酸化菌を分離しているのでいることは確かであることがわかった。
イネの酸化鉄被膜周辺にメタン酸化菌がいるという記載はないが、酸化鉄被膜周辺にいると仮定して考えると、イネの根量が増し、還元層に根が張り巡らせる程、還元層のメタンの消費量が増すことにつながる。
であれば、初期生育時に発根を優先するように土作りを行えば良いことになる。
稲作における土作りも畑作と同じで、タンニンのようなフェノール性化合物が定着すれば良く、定着すれば酸化層の厚みが増すことにもつながるので一石二鳥になる。
水田でタンニンのような有機物が増えると、酸化還元反応の視点からメタンの大気への放出量が減るという話題があるが、イネの根の発根の方でもメタンの放出量に影響を与えているかもしれない。
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