今回は稲作の地力窒素を考えるの続き。
前回の記事で窒素肥料についてを分類して、有機態の窒素のタンパクが地力窒素に該当するのでは?と記載したが、タンパクの分解の早さを考えると難しいという内容を記載した。
稲作には乾土効果という地力窒素の肥効を前倒しする手法があり、そこから地力窒素は土壌粒子に吸着している有機物であることが予想出来る。
であれば、地力窒素の形状はある程度絞られることになる。
地力窒素に関して検索をしてみたら、古い内容であるが、地力窒素の分子実体は何か 土壌には多様な分子量の有機態窒素が存在する - 化学と生物 Vol. 50, No. 4, 2012にたどり着いた。
上記の内容に拠れば、
- メソポア仮説:アミノ酸や小さなペプチドが鉱物表面および10nm以下の鉱物表面の穴へ吸着
- タマネギ層モデル:陰イオン性のカルボキシル基と陽イオン性のアミノ酸が粘土表面で結びつくことにより有機物の多重層を形成
- タンパク質リグニン複合体
- タンパク質タンニン複合体
- カプセル化モデル:ペプチドを高分子有機物により包含
- 超分子モデル:分子量の小さな有機物の水素結合などによる超分子の形成
が地力窒素に関する仮説であると記載されていた。
以前、腐植は土壌中のリン酸の固定を防ぐ等の記事で腐植酸の一種であるフミン酸の平均化学構成モデルについて触れた時、タンニンのような化合物にアルカロイド(窒素を含む化合物)が組み込まれていたので、腐植酸の中に組み込まれた窒素こそが地力窒素として捉えて良いはず。
であれば、
廃菌床堆肥のようなものが田に定着すれば地力窒素が増強することになる。
廃菌床堆肥には唯一のデメリットとしてリン酸が多いというものがあるが、稲作であればこのデメリットを気にしなく良いので好都合だ。
今回の話の発端となった方は、
冬期に田でレンゲを育てており、
鋤き込む前に2:1型粘土鉱物を施肥した後に鋤き込んでいる。
であれば、レンゲ由来の有機物の固定量を増強させる為に2:1型粘土鉱物の施肥量を増やせば良いのでは?という意見にまとまった。
レンゲ由来の有機物の固定量が増えれば、その分だけ団粒構造が増え物理性も改善される。
物理性が向上すれば初期生育時の発根量も増え、穂の形成時のサイトカイニンの合成量も増えることに繋がるわけで、一石二鳥と言える。