前回の青葉アルコールが葉から揮発するまでの記事で、青葉アルコールではないが、葉の中で香り化合物は配糖体として蓄積されていて、損傷を受けたときに糖が外れて揮発するという研究報告があることを紹介した。
これらを踏まえた上で、次に気になるのが、香り化合物がどのような経路で合成されるか?だろう。
香り化合物はどの植物にも一律あるはずなのに、栽培者の腕によって食害されなかったり、食害が止められなかったりといった差があるわけで、栽培環境によって合成に差があるはずだ。
というわけで早速検索してみたところ、
松井健二 植物の葉の香り化合物による生存戦略 - 日本農薬学会誌 44(2), 132 日本農薬学会誌
という解説にたどり着いた。
この解説では、香り化合物のことをGreen Leaf VolatileからGLVと略し、合成から放出までの流れをGLVバーストとしている。
GLV生成の基質は葉緑体内のガラクト糖脂質で、葉が損傷を受けた時に合成が始まるとされているが詳細は不明。
ガラクト糖脂質からリノール酸やリノレン酸等の不飽和脂肪酸を取り出し、
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酸素を付与しながら脂肪酸を切断していき、NADPHで還元すると、
Calvero. - Selfmade with ChemDraw., パブリック・ドメイン, リンクによる
青葉アルコールの一種であるヘキセノールになる。
余談だけれども、GLV生成を抑制した植物の灰色かび病菌への耐性についての話題があったが、GLV生成を抑制した株は抑制していない株と比較して、灰色かび病にかかりやすいという記述があった。
この時、抵抗性に関与していたのが、ヘキセノールの一つ前のヘキセナールというアルデヒドであったそうだ。
この話題を読んだ時、
草生栽培が頭に浮かんだ。
以前は、悲鳴のホルモンと言われるジャスモン酸を主体として見ていたけれども、香り化合物でも同様の事が言えるのではないかと。
通路を広くとって、定期的に通路の草をスパイダーモアで借り倒すことで、畑一体に香り化合物が充満する。
充満した香りを畝にいる作物が吸収することで、食害昆虫や病気への耐性が増す。
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となると、除草剤を使うと香り化合物が充満する機会を失うわけで、殺菌剤を使用すると虫による食害被害が増加するに引き続き、除草剤を使用しても食害被害が増加する可能性があると言える。
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