前回まででスベリヒユのもつCAM回路(CAM型光合成)についてを記載した。
ざっくりと書くと、
乾燥した環境において気孔を開いた際に葉内の水が過剰に蒸散されないための仕組みで、
乾燥ストレス下において非常に重要な機能と言える。
上の記事の更に一つ前の塩類集積土壌でも平然とたたずむスベリヒユで
スベリヒユはC4回路(C4型光合成)も持つと記載した。
このC4回路はエノコロでも触れた。
C4回路というのは農学を学ぶ上で重要な要素となるので、
せっかくの機会なので今回触れることにしよう。
まずは日本において一般的に見られるC3型について触れておくと、
光合成は水と二酸化炭素からブドウ糖を合成する反応で、
カルビン・ベンソン回路という反応系に水(図の左上)と二酸化炭素(図の右下)、
更には水から無理やり取り出した電子で糊付けしてブドウ糖(図ではグルコースと表記)を合成している。
この回路はC4回路やCAM回路でも共通で使用されており、
C4回路やCAM回路はカルビン・ベンソン回路に二酸化炭素を渡す仕組みが異なっている。
※CAM回路は夜間に二酸化炭素を溜め込む
というわけで、
C4回路のカルビン・ベンソン回路に二酸化炭素を渡す仕組みを見てみることにする。
C4回路は一般的に二酸化炭素濃縮と表現されるが多い。
C3回路では二酸化炭素を利用したい時に気孔を開いて必要量を葉に取り込むけれども、
C4回路では必要量以上に二酸化炭素を取り込んでおいて、
主に維管束(葉の葉緑体とは別の個所)で余剰分の二酸化炭素を何らかのカルボン酸(リンゴ酸等)にしておく。
C3回路に特に言えることだけれども、
気温がある一定以上になると光合成は頭打ちになる。
これはC3植物が高温時に気孔を開く量を抑えて二酸化炭素を取り込めないことが要因とされる。
C4植物は事前に二酸化炭素を濃縮しておくことで高温時でも二酸化炭素を体内から調達してより高い気温でも光合成を行うことができる。
となるとすべての植物がC4回路であれば良いのに…
という話になるけれども、
C4回路の植物にも欠点がある。
それは二酸化炭素の濃縮に余剰のエネルギーを必要とし、
冬等の光合成が弱り余剰のエネルギーを確保出来ない時でも、
濃縮の場である組織の維持をしなければならない
といった秋から冬にかけて負担が非常に大きい植物と言える。
ここでいうエネルギーというのが正に光合成の明反応から取得できる電子のことで、
光合成が盛んにできる時期であれば電子を余らせることが出来て、
二酸化炭素をカルボン酸へ合成する時の糊付けとして利用できる。
こう見ると、
どの仕組みにも一長一短があるため、
様々な光合成の型というものがあるんだね。