冬虫夏草の生態について知りたいの記事までで、
ヨトウ対策としてサナギタケは有効であるか?を知るために、
冬虫夏草とサナギタケの生態・培養・応用 | 官報・政府刊行物、法律・経済専門書店 | - 政府刊行物サービスステーション 株式会社かんぽう
サナギタケの人工培養や生態を見てきた。
人工培養から得られた知見として、
By Jose Ramon Pato from Coruña, España - Cordyceps militaris, CC 表示-継承 3.0, Link
サナギタケの菌糸体は宿主であるガの蛹(さなぎ)が居なくても生長することができる。
サナギタケの感染の研究時にヨトウに対する感染を調べていて、感染することがわかっている。
この二点の知見は当初の目的に対して、非常に励みになる情報となった。
今回は少し脱線して、
人工培養を調べている時に知ったサナギタケの薬効を見てみることにする。
その前に触れておこう。
日本ではサナギタケは冬虫夏草として扱われるけれども、
本場中国では冬虫夏草はコウモリガに寄生するシネンシストウチュウカソウのみを指し、
サナギタケは蛹夏草と呼ぶらしい。
※読み方は不明
早速サナギタケの効能を列挙すると、
・フリーラジカルの消去活性
・抗酸化作用
・高nocicertivity活性
・抗腫瘍起因性血管形成
・ガン転移に対する抑制作用 etc
が挙げられる。
最初の二つは下記の記事のSODについてを見てもらうとして、
3つ目、4つ目は飛ばし、
5つ目のガン転移に対する抑制作用だけれども、
ここの内容が面白かったので記載しておく。
サナギタケから発見されたコルジセピンという物質がガンの転移を抑制するとされる。
コルジセピンの構造を眺めてみると、
By Yikrazuul (talk) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
なんか、高校生物で見たような形をしている。
コルジセピンの別名は3-デオキシアデノシンと呼ばれ、
DNAの超重要な要素の一つである
By NEUROtiker - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
アデノシンから左下(3'位)のヒドロキシ基(-OH)が外れた(デオキシされた)ものとなる。
高校生物で左下のヒドロキシ基が如何に重要であることは習ったはず。
だからここではあえて触れずに先に進むとして、
ガン細胞は増殖の際に自身のDNAの複製も当然ながら行うわけだけれども、
コルジセピンがあると、アデノシンの代わりにコルジセピンを自身のDNAに組み込む。
コルジセピンは超大事なヒドロキシ基が欠損?しているため、
DNAが二重螺旋構造に戻ろうとした時に安定できずに崩壊する。
よってガン細胞の増殖が止まる。
この内容を見て、
生物学に触れた者であれば下記のような懸念事項が浮かぶだろう。
コルジセピンは人体の正常な細胞の増殖時にDNAに取り込まれたりしないのか?
様々な臨床実験において、
何故か腫瘍は人体にとって有害な細菌に対して増殖が抑制されたけれども、
有益な乳酸菌等の増殖は抑制されなかったと、
選択的な増殖抑制作用が見られたとのこと。
正常な細胞や構造が複雑な微生物は、
自身のDNAの複製時にコルジセピンを取り込まないという機能があるのだろうか?
なぜサナギタケがこんなにも人体にとって都合の良い物質を合成するのだろうか?
おそらくサナギタケが昆虫に感染する時に
宿主となるチョウやガの幼虫は様々な抵抗をしてきて感染を逃れようとする。
その時にサナギタケにとって様々な毒性の物質を合成して防御反応を示すけれども、
毒性物質の活性を止めるためにサナギタケの方も様々な物質を合成する。
そんな虫と菌の攻防の中で、
サナギタケの細胞には無害で虫の方の疲弊した細胞の増殖を止めるような物質というものが必要になるはずで、
そのうちの一つがコルジセピンだったのだろうなと予想される。
だから、
人工培養されたサナギタケの薬効や
穀物由来や昆虫エキスを元にした培地から収穫した子実体よりも、
幼虫に直接感染させて発生した子実体の方が、
有用成分が遥かに高濃度で含まれていた
という調査結果もある。
今回紹介したような虫と菌の攻防が、
畑でも発生してくれたら非常にアツい展開となる。
周辺にいたグラム陰性の軟腐病菌がとばっちりを受けて増殖できなくなった
という展開があったらアツ過ぎる。
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