前々回の石灰窒素の作用機序で石灰窒素の主成分であるシアナミドの作用機序を調べ、前回の酵母でのアセトアルデヒドの耐性で最もシンプルな真核生物の酵母でのシアナミド経由で蓄積されるアセトアルデヒドに対する振る舞いを調べた。
元々の話の発端は緑肥のヘアリーベッチが根からシアナミドを分泌するということから、土壌消毒の代替として晩秋からヘアリーベッチの栽培は可能であるか?というものだった。
今抑えたい症状が四万十の話題で頻繁に挙がったショウガの根茎腐敗病等や、以前からずっと話題に挙げているネギの軟腐病であるので、前者の卵菌や後者のグラム陰性細菌に対して、シアナミドが有効であるか?が主題となる。
前者の卵菌は菌という名称であるが、実際には菌ではなく、黄色藻類(珪藻等がこの分類に当てはまる)が葉緑素をなくしたものと考えられているので、真核生物として扱われ、どちらかといえば酵母に近いと言える。
後者のグラム陰性細菌についてだけれども、これについては石灰窒素の事例を辿っていくのが確実だろうということで、日本石灰窒素工業会が発行している石灰窒素100年 技術の歩みを参考にする。
上記PDFの48ページに石灰窒素の作用機序が記載されているので抜粋すると、
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石灰窒素の生理活性は動物、植物、微生物と広い範囲に影響を与えるが、基本的には酸化還元酵素、脱水素酵素(カタラ-ゼ、バ-オキシダ-ゼ、チトク-ムオキシダ-ゼ、アセトアルデヒド脱水素酵素)の働きを阻害し、その機構としてはシアナミドと-SH基の反応によるものと推定される
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※石灰窒素100年 技術の歩み 48ページより抜粋
今まで調べてきたものよりも作用機序の範囲が広く、生理的に影響の多い酵素の阻害が多い。
これを踏まえた上で、次のページに細菌による病害の話題に触れると、Bacillus Cubonianus、Bacterium Mori、Bacterium moricolumの三種に触れている。
前者のBacillus(バチルス)はグラム陽性細菌で後者のBacteriumは今の知識ではよくわからない。
取り急ぎ、細菌での報告があるということで、シアナミドが影響を与える土壌微生物は幅広いのだろうということはわかった。
あと気になることは、ヘアリーベッチはマメ科の緑肥であるため、
グラム陰性細菌である根粒菌含め、様々な土壌微生物との共生を行っているはず。
以前ベッチを栽培していた時に、根圏にびっしりと菌糸がはびこっていたのを見たことがあるが、同時に周辺で草が生えてこないということも経験した。
※ベッチではないけれども、菌糸のイメージとして下記のリンクを記載しておく
これはシアナミドを選択的に分泌していないと、根圏で土壌微生物と共生しつつ、少し離れたところではシアナミドを効かせるということが出来ないわけで、ベッチはただ単純にシアナミドを分泌しているわけではなさそうだ。