みすず書房からこれからの微生物学 マイクロバイオータからCRISPERへという本が出版されていたので読んでみた。
ちょっと前まで権利の問題で世間を騒がせていたCRISPER-Cas9を微生物学的な視点から応用までを丁寧に説明していたり、
バイオフィルムやクオラムセンシングといった私が学生の頃に教科書に載らなかったような内容がまとまっていたのが良かった。
丁寧にまとめられた本を足がかりにして、
最新の動向というものを検索しているわけだけれども、
新たな知見を元に軟腐病を改めて調べてみたら興味深い論文に行き着いた。
その論文の紹介の前にクオラムセンシングについて見ておくことにしよう。
クオラムセンシングの説明をWikipediaから抜粋してみると、
/****************************************************************/
クオラムセンシングとは、一部の真正細菌に見られる、自分と同種の菌の生息密度を感知して、それに応じて物質の産生をコントロールする機構のこと。日本語では「集団感知」などと訳されることがある。quorumとは議会における定足数(議決に必要な定数)のことを指し、細菌の数が一定数を超えたときにはじめて特定の物質が産生されることを、案件が議決されることに喩えて名付けられた。
/****************************************************************/
病原性の細菌で例えてみると、
細菌は常にクオルモンという物質を細胞外に分泌している。
クオルモンは有機酸を分解した代謝産物のようなもの。
細菌の周辺にクオルモン濃度が少ない場合は、
自身の仲間が少ないと判断して病原性の物質は合成しない。
菌密度が増すと周辺のクオルモンの密度が増し、
周辺に仲間がたくさん居ることをクオルモンの密度を経て認識することが出来る。
仲間が多くなったことがわかったら、
感染している宿主に対して病原性の物質の合成して攻撃を始める。
当然のことながら、
細胞外に分泌されるクオルモンは細菌の種類によって異なる。
今回はクオラムセンシングを病原性の細菌で話を進めたけれども、
クオラムセンシングは有用な細菌でも見られるらしい。
今回の内容を踏まえ、
次回から栽培で厄介な細菌由来の病気について見ていくことにしよう。
-続く-