食材中の亜鉛と聞くと、思い浮かぶのが、欠乏すると味覚障害になるだろう。
生物学をかじったことがある人であればジンクフィンガーでタンパク質の合成に関わるというものもあるはず。
先生に覚えておけと言われたジンクフィンガーを私はまだ忘れていません
どうやら味を感知する味蕾細胞というものは新陳代謝が活発で、
短い期間で新しい味蕾細胞に入れ替わる為、亜鉛が不足すると味蕾細胞の生成に支障をきたし、味覚障害となるらしい。
野菜の美味しさとは何だろう?カリウムまでの話で旨味や味の感じ方を増強させる内容を見てきたけれども、
今回は摂取したミネラルによって味自体を感じやすくなる方を見てみることにする。
亜鉛を多く含む食材と言えば、牡蠣や海藻と言った海の幸とレバーやチーズといった動物性の食品をよく見聞きする。
植物性で亜鉛を多く含むものは何だろう?と検索してみたら、
橋本明子・神戸大朋 味噌など大豆発酵食品による亜鉛栄養改善の可能性 -亜鉛吸収に機能するトランスポーターの発現に及ぼす効果- 醸協 第106巻 第12号(2011) 811-817
という論文に行き着いた。
亜鉛の欠乏は人体に重篤な影響を与える為、亜鉛欠乏を予防することは健康社会の実現に極めて重要な要素の一つであるらしい。
この論文では、植物性の食材である大豆に亜鉛が豊富に含まれていて、
momokaphotoさんによる写真ACからの写真
そのまま食すると吸収量は少ないけれども、
味噌等の大豆発酵食品にすることで亜鉛の吸収量が増加することが記載されている。
ダイズに含まれるフィチン酸という有機酸がダイズを摂取した際に吸収を阻害するらしく、
ダイズを発酵させることでフィチン酸が分解され吸収を阻害するものが少なくなる。
By Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
フィチン酸は鶏糞の中にある有用だけど厄介な有機態リン酸の記事で触れた。
ダイズは旨味や味覚を増強させる要素だけでなく、人体の味蕾細胞の方にも良い影響を与え、
これらの成分はどれも健康社会の実現に重要な要素である。
これらの話から
「野菜の美味しさ = 食べると健康になる」の予想もさらに現実的を帯びてきた。
更に健康社会を実現する為に、作物が十分に亜鉛を吸収できる必要があるので、土壌劣化した畑を減らすことも重要だ。
関連記事