11月頃になると毎年栽培について話す機会が多くなってくる。
その中でかなりの頻度で質問される内容について書いておくことにする。
牛糞等の家畜糞堆肥に依る土作りのことだ。
家畜糞は成分的には有機質肥料に近いものがあって、土作り用の堆肥ではない。
堆肥という名前で読んでいるのが諸悪の根源で、牛糞堆肥で土作りを行うことは望ましくない。
※牛糞を有機質肥料と捉えて超高品質の米を収穫している方がいる。
この手の話をすると、そんなはずはない。うちは牛糞堆肥で良いものが穫れているとか、近所の農家さんが牛糞堆肥は良いぞと勧めててくるという意見が挙がってくる。
ここで一つ有名な話を持ち出してみる。
上限を知らない者は何が良いかを判断出来ないということがある。
※上限はここでは野菜の品質にしよう
更に自戒の意味を込めてもう一つ挙げると能力の低い人は自分の能力が低いことに気付く能力も低いという心理の面での説もある。
例を挙げると、ネギを収穫する為に一作で農薬による防除を10回行うことが普通だと思っている人は、防除回数が極端に少ない回数で収穫出来ることを受け入れることが出来ない。
この背景の元、牛糞堆肥で土作りをして防除回数が同じで収穫物の重量が少し上がったら良しと判断する。
この判断で怖いのが、来年以降で防除回数が増えたら、それはおそらく気候条件が悪いといった外的要因に目を向けてしまうことだ。
ここで上限を知らない者は何が良いかを判断できないに話を戻すと、栽培にとって上限とは一体何なのだろう?ということで、巷では殺菌剤なんて使わないよと言いつつ、品質が良いとすぐに品薄になるような品質の野菜を収穫する人もいて、上限はいくらでもあるはずで、勧めてくる方は上限はどこに置いているのか?というを知ってからはじめてその人の意見を受け入れるべきだろう。
栽培に限らず誰かに何かを伝えられたとしても腑に落ちないということもあるかもしれない。
その中で話を受け入れて成果を上げる人と上げられない人の差は助言している人を如何に評価するか?に尽きるのではないだろうか。
近所の農家さんが牛糞堆肥は良いぞと勧めててきて何を信じていいかと質問をされた方に、勧めてきた方の野菜の出来はどうですか?参考になりますか?と聞き返したら言葉に詰まったので今回の内容を書いてみた。
余談
兵庫県立農林水産技術総合センターの試験で興味深いデータがある。
牛ふん堆肥連用試験26年間の収量変化という試験で、米の栽培において、牛ふんを26年間毎年最低1トンを入れ続けて栽培試験を行った結果、量は他の肥料の肥培管理に関わらず、10年目までは収量が安定して、11年目から収量が不安定になるという報告がある。
※農文協 渡辺和彦著 作物の栄養整理最前線 ミネラルの働きと作物、人間の健康 48ページより
収量が不安定になる要因が、一つは窒素肥料の蓄積で天候によって効きが極端に変動する。
もう一つはマンガンの慢性的な欠乏症に陥る。
マンガンは光合成や虫による食害被害からの回復等に関与しているので、11年目に限らずそれよりも前から牛糞の使用により質が悪くなっていることは容易に想像できる。
ここで穫れる野菜は食味も栄養価も低いことは確実だ。
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