ボカシ肥作りで材料でトレハロースを入れているという内容を見かけた。
何故これから発酵させるものに対してトレハロースを加えるか?ということが気になった。
何故ならば、トレハロースは真核生物の微生物、つまりは糸状菌等の菌が日常的に合成するものであって、
植物が菌根菌に感染した際に植物の根と菌が交換するものであったり、
酵母による発酵食品のパンの中にもトレハロースが含まれている。
トレハロースは酵母内で分子シャペロンとして働き、生存にとって不利な環境における耐性として活用しているとされている。
ボカシ肥作りは化学的な視点ではなく、日常生活、特に食品で体に良いものから連想して材料に加える傾向が多いので、ボカシ肥にトレハロースを入れる発想は食品加工からきていると予想してみた。
この発想を基にして検索をしてみたら、
福永千文等 パン生地における発酵特性及び冷凍耐性に対するトレハロースの機能評価 - 食総研報 No.67, 1〜8という報告にたどり着いた。
この報告では、生地に糖をたくさん含むパン(菓子パン等)と糖をあまり含まないパンにおいて、ショ糖の一部をトレハロースに置き換えた時の焼き上がり時のパンの容積を調べている。
この研究の背景を先に補足として伝えておくと、パン生地において糖を加えると浸透圧が高まり、酵母にとってストレスが高まってしまう。
そのため、菓子パン等のパンでは浸透圧耐性のある酵母を利用するらしい。
一方、糖の濃度を高めると生地中にいる酵母は冷凍障害を受けにくくなる。
この背景を踏まえた上で、ショ糖の一部をトレハロースに置き換えた生地を冷凍した後解凍して発酵した時の発酵力を調べると、
高糖生地ではトレハロース添加による冷凍障害に対する保護効果は見られなかったが、低糖生地ではショ糖の半分をトレハロースに置き換えたことで保護効果が見られた。
今回の報告からボカシ肥への添加を考察すると、
ボカシ肥作りは冬の仕事であることが多いので、トレハロース添加によって米ぬか中の微生物による発酵力は落ちないようになると予想されるが、そもそもの話で米ぬか等の材料は低糖生地のように糖が少ない状態であるのか?は不明。
発酵を開始する前に夜間の寒さに触れる可能性があるので、トレハロース添加は有効であるかもしれないけれども、
経験上、発酵が止まったということがなかったので、トレハロース添加は不要であると判断することにした。
余談だけれども、
下記の記事に記載した通りで植物におけるトレハロースの影響がポジティブであるとするならば、
糸状菌(キノコやコウジカビ)による徹底的な発酵によって生まれた廃菌床堆肥には大きな可能性があることになる。
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