シニグリンとアリルイソチオシアネートの記事で、硫黄を含む化合物を調べている時に、伊藤岳洋等 硫黄欠乏に対する植物の応答 適応のための内的動態 - 化学と生物 Vol. 60, No. 10, 2022にたどり着き、本編の内容とは関係ないが、概要に記載されている内容に気になった。
気になった内容というのは、
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近年は硫化水素の発生により生じる秋落ちを防ぐために長期に渡り無硫酸根肥料を施用してきた圃場における水稲の-S※が問題となっている
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ということ。
※硫黄欠乏のこと
この内容が目に付いた時にハッとした。
稲作の中干しの意義を整理する等の記事で記載しているが、硫酸塩肥料の使用には細心の注意を払っている。
硫酸塩肥料は即効性且つ、直接的な副作用がなく使用しやすい肥料であるが、残留性が高く、後々の副作用が大きい特徴がある。
なので、水稲に限らず硫酸塩肥料の使用は制限している。
ここで気になるのが、水稲で硫黄を入れるタイミングは
一発肥料のみでの栽培であれば、有機物に含まれるものと人工的に遅効性にする硫黄コーティング肥料あたりだろうか。
※無機肥料の方では意図的に硫黄成分は抜いているはず。
※全国的な使用状況を確認すると、稲作で硫黄コーティング肥料の使用量は少なそうだ。
プラスチック被覆肥料代替資材 プラスチック被膜殻の流出防止対策に係る事例 - 農林水産省
これからの稲作では硫酸塩肥料の使用は控えたままになるはずなので、イネの硫黄欠乏の症状の目利きは鍛えておいた方が良いのだけれども、水稲の硫黄欠乏症状の現状と対策 | 農業いばらきに拠ると、硫黄欠乏は窒素欠乏と似たような症状になるため判断が難しい。
更に硫化水素の発生を抑制する為に施肥する鉄が過剰になると、硫黄の吸収が落ちてしまうそうで、これまた難しい。
今年も観測していたレンゲ米栽培の田が無事に収穫を迎えたそうです2023で紹介している物理性の改善 + レンゲ + 減肥 + 中干し無しの田では今のところ硫黄欠乏らしき症状は見られない。
硫酸塩肥料の施肥量は明らかに少ないので、硫黄欠乏には注意した方が良さそうだ。