農文協の現代農業9月号の廃菌床の特集で紹介していただきました
昨年2018年8月5日に発売されました農文協の現代農業9月号に記載されている内容で、年々低下している秀品率をV字回復したという話題がある。
株式会社京都農販のいちメンバーとして、京都の生産性の向上の取組を評価していただいたからか、次はここに行って欲しいという紹介や、お問い合わせから栽培状況を見て欲しいという連絡を受けるようになり、日本の様々な産地に行く機会が増えた。
秀品率が年々低下しているという相談で訪れ、畑を見ながら栽培に関することを聞くと、
ほぼすべての苦戦している畑では厩肥(家畜糞堆肥)主体の土作りをしていた。
多いところでは、反あたり4トンという量の家畜糞堆肥を栽培開始前に入れているところもあり、
これから栽培開始前にも関わらず、土表面がひび割れしているところすらあった。
次作では勇気を持って家畜糞堆肥の使用をやめてみることを勧めると、翌年訪れた時には秀品率が回復していたということがすべてだった。
家畜糞堆肥は熟成すればする程、硝酸態窒素の濃度が高くなると言われている肥料となる。
硝酸態窒素といえば水溶性の栄養塩だ。
塩には土作りにおける物理性の要素はない。
私の言葉ではないけれども、いつもこんな話から始まる。
家畜糞堆肥というのは成分を見ると、動物性の有機質肥料や有機配合肥料とあまり変わらない成分であるのに、有機質肥料とラベリングされていれば、
畑に入れる量はせいぜい20袋(400kg)ぐらいで、それ以上入れると栽培で障害発生することが肌感覚でわかっているはず。
何故、家畜糞堆肥という名前に変わると、反あたり50袋以上を入れてしまうという暴挙を行ってしまうのか?
ここには周辺の畑で入れているからうちでもという心理が働いているらしい。
肥料代を浮かせる為の家畜糞堆肥が、結果として秀品率の低下や農薬の使用量の増加で肥料代の削減を大幅に超える程、利益が下がる。
以前、過ぎたるは猶及ばざるが如しの記事で
ヤマケイ新書 大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち | 山と溪谷社
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所/大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち
土壌を研究している方の本から家畜糞や窒素肥料に関する話題を紹介した。
日本は家畜が盛んではあるけれども、家畜の飼料は輸入頼りとなっている。
国内に資源が入り続けている現状は、国内に家畜の糞として堆積し続けることに繋がり、家畜糞の処理に困っている。
家畜糞は170%程の増加率で増加し続けていると記載すれば、家畜糞問題が如何に深刻であるか捉えやすい。
もう一つの問題は、家畜糞の主成分である硝酸態窒素は土壌のpHを下げる方に働く。
有機質肥料として捉えての使用であれば許容範囲だけれども、家畜糞堆肥としての使用だとpHの低下は無視出来ない。
結果として、土壌の酸性化によって吸収できなくなるカリウム、カリウム欠乏によって根が弱り他の肥料分も吸収できなくなるという問題も発生する。
そもそもの話で、水溶性の栄養塩である硝酸態窒素が根の周辺にあると発根の勢いが弱まり、土壌水分や肥料分の吸収量が落ちる。
結果的に微量要素を含む金属系の肥料分が吸えなくなり、作物の栄養価は落ちていくと安易に予想出来る。
牛乳は栄養価が高く、ヨーグルトやチーズといった素晴らしい食品の材料になり、脱脂粉乳にすれば軽量で輸出向きになり外貨を稼ぐ手段にもなる。
そこから発生する家畜糞によって、作物の栄養を下げるような行為を行うのは非常に勿体ない。
今こそ、栽培と畜産が協力しあって、食と健康を見直すべきだと切に願う。
昨今の国内の医療費や保険料の増加を栽培側から抑えたい。
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