講談社 新しい植物ホルモンの科学 第3版のサイトカイニンの章で周辺の栄養と発根についての記述があった。
その内容を記載する前に、サイトカイニンについて触れておくと、高校生物においてのざっくりととしたサイトカイニンの説明に留めるけれども、
By Edgar181 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
シュート(枝)の発生の促進で、オーキシンの逆の働きをする。
オーキシンは側根の形成の促進であったため、
オーキシンが発根を促進するメカニズムを解明 〜発根を調節する農薬の開発に期待〜|奈良先端科学技術大学院大学
ざっくりとしたイメージでサイトカイニンはその逆と見ていい。
※厳密には見てはいけないけれども、この後の話に続かないのでそのまま進める。
これを踏まえた上で、冒頭の本のサイトカイニンの話題に戻ると、植物は根の周辺に栄養塩、特に窒素系の塩が多いと、発根が抑制されるという報告があるとのこと。
おそらく植物は根の周辺に栄養塩がたくさんあるとサイトカイニンの合成が活発になり、発根よりもシュートの形成を優先するのだろう。
この話題を栽培という産業に当てはめると、発根が抑制されるのは非常に困る。
地上部が旺盛であれば良いだろうと感じることもあるだろうが、栽培において追肥という概念がものすごく大事であって、追肥をする上で初期生育の発根というのは重要な要因となる。
ここで栄養塩というのは何なのか?ということについて触れておく。
まずざっくりとした塩(えん)だけど、塩(えん)は酸由来の陰イオンと塩基(アルカリ)由来の陽イオンがイオン結合したものを指す。
つまりは、硫安(硫酸アンモニウム)、塩化カリウム、炭酸苦土、さらにはグルタミン酸ナトリウムといった有機無機関係ない単肥を指している。
更に植物はすぐに吸収できるものでなければ、周辺に栄養塩があると認識出来ないため、塩(えん)の肥料であっても、水溶性の速効性のものだけになるだろう。
となると、慣行的に利用されている施肥設計のNPK計算は、NPKの計算を主体とすると発根を抑制して、栽培上不利な状態にしてしまう可能性があることになる。
何故ならば、NPKの計算を主体とすると、水溶性とく溶性の考慮が全くないため、単純に計算をすると水溶性のみで構成してしまうことが考えられる。
これを踏まえた上で、いつも通り家畜糞堆肥の土作りの影響を考えてみると、
家畜糞堆肥は塩類集積を引き起こす可能性が非常に高い堆肥であり、堆肥が熟成されていればいる程、硝酸態窒素(窒素系の塩)が多いとされる。
これ以上はもう書かなくても良いだろう。
施肥設計は新たな概念を生み出さなければならないタイミングなのだろうな。
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