前回の記事でポリフェノールの一種であるフェニルプロパノイド類について触れた。
フェニルプロパノイド類は芳香族のアミノ酸であるフェニルアラニンが脱アミノ化して出来たケイヒ酸を基に合成されるフェニール性化合物を指す。
人がケイヒ酸を摂取すると抗酸化作用、α-グルコシダーゼ阻害作用とリノール酸自動酸化阻害作用が観測された研究結果があることを前回の記事で紹介した。
作用の一つのα-グルコシダーゼ阻害だけれども、α-グルコシダーゼという酵素を阻害すると何が良いのか?
今回はα-グルコシダーゼの作用から見ていくことにする。
α-グルコシダーゼをWikipediaで読んでみると、デンプンといった多くの糖が直鎖で結合した炭水化物からアミラーゼで二糖類が出来る。
その二糖類から単糖(グルコース等)に加水分解する酵素がα-グルコシダーゼとなる。
グルコース等の単糖は簡単にカロリーを取り出せる物質となるので、α-グルコシダーゼが阻害されると摂取した炭水化物からカロリーを取り出せなくなる。
カロリーが取り出せなくなったら生命活動が出来なくなるじゃないか!?
ということを思ってしまうが、阻害作用を持つ物質を摂取したからと言って、体内にあるすべてのα-グルコシダーゼが一斉に停止するわけではなく、一部の酵素反応が停止する。
例えば、デンプン質の食べ物を摂取した際に、
デンプンからカロリーと取り出すのが上記のような反応であったとする。
グラフは縦がグルコースの量で横が時間とする。
デンプンを摂取後、酵素によってデンプンからグルコースを切り取ることでグルコースの量は急激に増えるけれども、グルコースを代謝してカロリーを取り出すことでグルコースの量は減る。
ここでα-グルコシダーゼを阻害して、デンプンから単糖を分離しにくくすると、
赤い線で描写したように時間あたりのデンプンからグルコースを切り出す量が減ることで、食後の血糖値を上昇を緩やかにさせることに繋がる。
そのため、α-グルコシダーゼの阻害を調べると糖尿病の薬として紹介されている。
ケイヒ酸は陸上の植物にとって重要なリグニンの材料となる物質なので、様々な作物に含まれていると思われる物質で、おそらくだけれども、これから成長が旺盛になるであろう個体に多く含まれているはずの物質なので、デンプン質の穀物と野菜を一緒に摂取すると、デンプンからカロリーを得る過程を緩やかにするという話に繋がる。
作物の栽培中に虫の食害を頻繁に受けている個体だと、防御反応としてケイヒ酸を大量に消費して防御壁であるリグニンの合成が盛んになるだろうから、虫を寄せ付けないような健康的な野菜が良いのだろうなということも想像できる。
有機栽培であっても、葉についた虫を頻繁に取る作業があるような野菜だったら、それはおそらく健康効果が少ない野菜になるのだろうな。
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