とんでもない良書と出会った。
この手の本が大学院進学前にあれば良かったと本気で思える程の本だ。
著者の知識の幅と潔さには感服する。
何がすごいかといえば、地球の誕生から、最初の生物はどこで生まれたのだろう?
そして生まれた時にどの鉱物から溶け出した成分を利用したのだろう?
溶け出した成分を自然現象を重ね合わせて、アミノ酸 or 核酸は自然に合成される可能性はあるか?
そして生物は誕生した。
誕生した生物は最初はどのようなイオンを欲したのか?
進化により生まれた生物の排泄物で環境は変化(汚染)し、変化により新たに溶け出すことになったイオンを生物はどのように活用したのか?
それをすべて周期表を元に話を進めるので、各原子が生物にどのように利用されているのか?のイメージが付きやすい。
農学の肥料学や農薬学で、どの原子が植物にとってどのような働きがあるから、欠乏症や過剰症はこんな感じなんて記述が多いけど、これらの内容を読む前に一度は周期表と向かい合った方が良い。
まえがきに専門でない方でも読めるとか、高校の先を見てみたい生徒にも向いているとあったけど、文章の途中にストロマトライトとか縞状鉄鉱層(BIF:Banded Iron Formation)といった地質系の用語が頻繁に出てくるので、学部生であっても本書を読むために相当他の書物も読み込まなければならないと感じた。
ここらへんの用語は以前、
七宗町の最古の石博物館に訪れていたので、イメージはしやすかった。
ここから本題だけど、8章で(微)生物は酸化した銅Cu2+と出会う。
銅(イオン)は生物が利用する金属の中で最も結合力が高く、結合力が高い故に、体内の大事な何かと結合してしまうと大事な何かは動けなくなって、動けないことこそが致命傷となる。
これはアルミニウムと同じだね。
本書では銅を「破壊と創造」と表現している。
途中を端折るけど、銅は結合力が強いとあるけれども、使いようによっては何かの結合を切ることも得意で、何かを切りつつ何かをつなげる。
この特徴を現在の生物では銅酵素としてリグニンやキチンの分解に向ける。
農学を学んだ者で銅と聞けばまっさきに浮かぶのが、硫酸銅と消石灰を組み合わせたボルドー液だろう。
このボルドー液だけど、今までは殺菌剤とだけ把握していたけれども、銅の存在がより身近になった今読めばもっと違う見方になるのかもしれない。
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