nutrient_translocation


前回の植物体内でのシンクとソースの記事までで、サイトカイニンによる養分転流でシンク強度の増加から維管束の師管の話に移った。

シンク - ソースと師管の話で養分を送り出す器官(上の図で葉)のソースと養分を受け取る器官(上の図で果実)のシンクがあった場合、ソースの方が養分濃度が濃く、いくらシンク強度を増強したとしても、相対的にシンクの方が濃度が薄くなるため、師管は想定通りに動いてくれないはず。


この師管による養分転流はどのように考えられているのだろう?ということで整理してみることにした。

※今回の記事を読み続ける前にカルシウム過剰によるカルシウム欠乏を一読しておくことをおすすめします。




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維管束イラスト - No: 1038112/無料イラストなら「イラストAC」


養分転流を考える上で、師管と一緒に習うであろう導管も一緒に見る必要があるそうだ。

導管というのは、


plant_water_proof

気孔の日々のお仕事


土壌水分よりも根の濃度を濃く、葉の気孔から蒸散して根や茎よりも葉を濃くして、浸透圧を利用して一気に水と水に溶けた養分を吸い上げる際に通過する器官のことを指す。

導管 - Wikipedia


この導管の働きを踏まえた上で、師管の方で圧流説というものがある。


pressure_flow_theory

※シンクにも導管が繋がっているが上の図では省略している


導管は浸透圧を利用して根から葉へ水を吸い上げる(赤の矢印)。

濃度の濃いソースの器官も導管と繋がっているのでソース側の養分が積荷された細胞にも水の移動がある。

ソース側の方に水が流れ込み続ける為、ソース側の方の水圧が増し、水圧の少ないシンクの方に水の流れが発生する(青の矢印)。

ソースからシンクへの水の移動に合わせて養分転流が発生すると考えられている。


この仕組みであれば、どんな背が高い植物であっても導管が機能していたら養分転流は発生する事になる。

シンク側でサイトカイニンが集まり、サイトカイニンによってインベルターゼが働き二糖のショ糖から単糖に分離して、シンク強度が高まることで養分転流を活発にするという理屈はなんとなくわかった。

サイトカイニンは細胞壁インベルターゼを活性化する


圧流説とサイトカイニンのシンク強度の増強だけでは、シンク側で都合よくサイトカイニンが働くのはなぜだろう?という疑問が残るが、今のところはここまでで良しとしよう。