糸状菌が分泌するシュウ酸の役割の記事までで、土壌に過剰に蓄積したリン酸の問題と利用について触れてきた。
土壌に蓄積するリン酸は主にCa型リン酸、Fe型リン酸、Al型リン酸と有機態リン酸の4種と記載して、そのうちAl型リン酸までの3種について触れてきた。
これから有機態リン酸について触れていくことにしよう。
以下の内容は武田容枝 土壌リンの存在形態と生物循環 - 土と微生物 (Soi!Microorganisms) Vol. 64 No.l, pp. 25~32 (2010)を参考にして記載する。
有機態リン酸といえば、生物由来のリン酸で
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米ぬか等の穀物由来の有機物や家畜糞中の未消化成分に多いフィチン酸、
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生物の細胞の膜を構成するリン脂質や
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生体内でエネルギーの貯蔵や生物情報の設計図(DNA等)で利用する核酸等がある。
このうち、土壌に蓄積しやすいのがフィチン酸で、土壌中に無視できない量のフィチン酸が存在することになる。
余談だけれども、フィチン酸以外のリン脂質と核酸由来のリン酸は作物が利用しやすく、残留し難い。
土壌の微生物が難溶性のリン酸を吸収して、体内でリン酸を利用した後に死滅する事で植物にとって利用しやすいリン酸が残ることに繋がり、微生物が豊富な土壌ではリン酸が効きやすくなるという話に繋がる。
土壌に蓄積しやすいフィチン酸には厄介な特徴がいくつかある。
六角形を形成するように繋がっているリン酸基間でキレート結合がある。
このキレートが厄介で、片側で土壌の粘土や腐植にあるアルミニウムとキレート結合することで、フィチン酸と土壌が強力に繋がり、植物や土壌の微生物が利用し難い状態となる。
上記の状態でもう片側のリン酸基間で亜鉛等の超重要な微量要素と強力なキレート結合することで植物の弱体化に繋がる。
フィチン酸関連でもう一つ厄介な内容を挙げておくと、既存の土壌分析のリン酸の測定ではフィチン酸は対象外となっている。
土壌に蓄積し易く、他の養分の吸収に影響を与え、しかも見えにくいという3点から、最も注意すべきリン酸と言える。
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