土の形成において、根が土の固い箇所を砕き、根の表層が剥がれ、表層の粘着物が土の粒子を接着するという話がある。
緑肥の効果の一つとして挙がる団粒構造の形成当たりがこの作用に依るものだろう。
この時の粘着物というものが
水溶性の食物繊維のペクチンは吸着能を持つの記事で触れた、植物が自身の体を丈夫にする時に利用するペクチンだと言われる。
根の表層が剥がれることに関して興味深い研究報告があるので、その内容を紹介する。
Control of root cap maturation and cell detachment by BEARSKIN transcription factors in Arabidopsis | Development 2016 143: 4063-4072; doi: 10.1242/dev.142331
※日本語による解説:根の先端を保護する細胞が自ら剥がれ落ちる仕組みを解明、細胞壁を分解する酵素と調節因子を発見 ~植物の成長力増進や土壌環境の改善に期待~|奈良先端科学技術大学院大学
上記の論文では、シロイヌナズナにおいて根の先端の細胞が内側の細胞にペクチンを分解する酵素の合成の指示を出し、合成された酵素を根の最外側の細胞に運び、最外側の細胞の細胞壁のペクチンを分解して、表層を剥離するという一連の流れが明らかとされたそうだ。
根の表層の剥離によって細胞内にたまった様々な代謝産物が分解されることなく、直接土壌中に散布されることになる。
断片化したペクチンに限らず、表層の硬化等に関与していたフェノール性化合物も同様に土壌中に散布されているはずだ。
現象としては前から言われていたものだが、仕組みが明確になることで諸々のことがイメージしやすくなる。
表層剥離と合わせて、根の先端では有機酸が放出されている。
例えば、
2:1:1型粘土鉱物である緑泥石(上の図の右)は物理的風化→有機酸処理によってマグネシウムや鉄を容脱しつつ層間を広げる?特徴があるので、植物の根が緑泥石に接触し、物理的風化を促し、根の先端から放出された有機酸により緑泥石がより荷電し、その電荷に剥離した根の表層が吸着するという流れをイメージできる。
剥離したペクチン以外に根の二次代謝産物が未分解のまま土壌に散布されるが、それはコウジカビ等によって重合し、それらも土壌中の粘土鉱物に吸着される。
実体顕微鏡で土と混ぜたコロイド化したベントナイトを見るの記事で見た土の塊の内側でコロイド化した粘土鉱物に根の表層の有機物が付着しているというイメージがしやすいのかなと。
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