前回の氷核活性細菌によって昆虫の耐寒性が減るという記事で、昆虫が葉を食す際、葉の表面にいる細菌を一緒に摂取すると、体液の凍る温度が上昇して耐寒性が減るという現象があることを記載した。
この内容を見て頭に浮かぶこととして、作物の栽培において、
殺菌剤を使用することで虫による食害が増えることに繋がるのではないかと。
この内容に関して興味深い話があったので紹介する。
要約すると植物がAM菌と共生すると、植食性昆虫に対して何らかの影響をあたえる。
AM菌と共生した植物では葉食性昆虫や潜葉性昆虫に食害されにくくなり、カーバメート系殺菌剤を使用した実験区では食害されやすくなった。
※ただし、すべての昆虫で同様のことを言えたわけではない。
植物がAM菌との共生によって、植食性昆虫の個体群密度の低下に関与した要因はリン酸の吸収効率が改善されたことよりも防御反応を示す二次代謝産物の影響が多いと考えられている。
上記の論文でざっと見る限り、葉食性の昆虫に対して正の影響を与えるものが多い傾向にあるので、今年非常に困ったヨトウガの幼虫に対しても有効である可能性が高い。
今回の内容は前にヨトウ対策は植物ホルモンの視点からの記事で記載したものと同じ結論であるけれども、今回抑えておきたい要素としては殺菌剤の使用が昆虫に対しての耐性を減らすということだろう。
となると、ヨトウガによる被害を軽減させるために意識することの一つに、病原性微生物による病気を発生させないということが重要になってくる。
補足
作物と菌根菌の共生により各種微量要素の吸収効率も改善され、虫や病気に対する抵抗性が増す
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