栽培でヨトウに困っているという話をよく聞く。
ヨトウというのはヨトウガの幼虫で、所謂イモムシだ。
チョウを含む鱗翅目の幼虫の中で夜行性の部類に入る。
前回のカリバチとミツバチの誕生の誕生の話を踏まえると、カリバチは暗くなったら巣に帰るので、その後に活動する夜行性の幼虫というのはニッチを狙ってきたなと感心する。
ヨトウガを防除するために殺虫剤を利用する方が多いけれども、昼は地中に潜っている為、防除の時間帯を遅くしなければ効かないとこれまた厄介。
おそらく、殺虫剤が最適解ではないのだなと。
ここで話題に挙がるのがジャスモン酸だろう。
ジャスモン酸は植物ホルモンの一種で、講談社 新しい植物ホルモンの科学 第3版のジャスモン酸の章を読むと、感染された細胞が殺され栄養分を吸収するタイプの病原菌(殺生菌)に対する防御反応を示す。
ジャスモン酸で処理された葉にはプロテアーゼインヒビター遺伝子の発現誘導とタンパク質の蓄積が見られ、食害虫の消化酵素の働きを阻害する。
※講談社 新しい植物ホルモンの科学 第3版 108〜109ページより引用
植物を食害する虫はジャスモン酸で処理された株を避けるようになるらしい。
だったらジャスモン酸を利用しようと話になるけれども、現時点でジャスモン酸系の農薬はほとんどの作物(主に野菜)では使用できない。
この手の話をすると大体が農薬がない≒手の打ちようがない
ということになるけれども、ジャスモン酸は植物ホルモンであるため、ここで話を終わらせてしまうのは勿体無い。
というわけでここで全身誘導抵抗性を持ち出してみる。
抵抗性と言えば、病原菌の感染や虫に因る食害を受けた際に発現する防御反応のことで、植物ホルモンのエチレン、サリチル酸(SA)とジャスモン酸(JA)が関与する。
それぞれの植物ホルモンは役割が異なる。
ここで東京化学同人から出版されている植物病理学第2版を取り出し、感染と防御応答のサイエンスを読んでみると、
※東京化学同人 植物病理学第2版 135ページより引用
植物体内で何をきっかけとして、何の応答が発生するか?が整理されている図があった。
ここで注目すべき点は図の右の誘導全身抵抗性(ISR)で根圏微生物が影響しているものがある。
根圏微生物についてもう少し詳しく触れると、非病原性根圏微生物による誘導と記載されている。
植物が根圏の非病原性の微生物と共生すると傷害誘導全身抵抗性(WSR)と同様の状態となるとされる。
これは葉を虫にかじられなくても、虫にかじられたような状況になるということで、根圏微生物の範囲になるので、肥料(特に基肥)の範囲になる。
どのような根圏微生物と共生すれば良いのか?はわからないけれども、共生を促すのであれば、植物の発根量を増やし、土壌の微生物との共生で微生物側に旨味ある状態にしなければならない。
土壌の微生物を豊かにするというのは抽象的過ぎるので、発根量に注目するで方針はブレないだろう。
発根量を増やすにはどうすれば良いのか?
それは今まで沢山触れたので、端折ることにする。
おそらく草生栽培の効率化に解があると予想している。
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