今年の長雨により低温障害や、稲いもちの被害が深刻化しつつある。
低温障害は深水で根元を一定の温度に保つことで問題を緩和するとして、稲いもちの方は何かと厄介となる。
いもちは以前、いもち病の抵抗性を色素の観点から見てみるの記事で、フラボノイドの一種であるサクラチネンの蓄積によって稲の株内への侵入を抑制できるという内容を記載した。
ただ、フラボノイドであれば合成にはおそらく紫外線の照射が関係している可能性が高く、長雨による日射量不足でいもちの回避を困難にする。
※他にケイ素で葉を頑丈にすれば、いもちの感染を減らせる
いもちは糸状菌による症状なので、殺菌剤を使うべきか?
サツマイモの大産地で基腐病が蔓延しているらしいまでの記事で、稲作に限らず殺菌剤を一度でも使用してしまうと、その後の栽培に悪影響が残り、コストが無駄にかかり続ける可能性が非常に高く、トリコデルマと聞いて思い出す師の言葉の記事で記載したような、既に共生といった良好な関係を結んだ菌や細菌との関係を断ち切り、現在進行形の耐性が減る可能性もある。
※殺菌剤によって水田の地温、水温を高める要因の菌が減り、低温障害を助長する可能性がある。
上記の可能性が頭に浮かんだ時に、イネが共生している菌はないか?という疑問が湧いた。
確か、土壌微生物生態学(堀越孝雄 ・二井一禎 編著)の本でイネのエンドファイトが窒素固定をしているという話題があった事を思い出した。
というわけで検索してみたところ、植物共生細菌「エンドファイト」の農業への応用|Eco Highlight 環境研究紹介|環境報告書2012|理化学研究所のページでイネファイターという微生物資材があることがわかった。
イネファイターの詳細を調べてみると、アゾスピリルム属に分類されるグラム陰性の細菌で土壌に生息して窒素固定能を有するらしい。
土壌によくいる細菌であれば、冬季に乾土効果を狙った耕起をせずに、レンゲを育てていれば、自然と共生するだろう。
イネが土壌中の細菌と共生して窒素固定をするようになるならば、葉の色が濃いイネはいもち病に罹りやすいの記事の内容から施肥設計で窒素分を減らせば、いもち病の感染の予防になるはずだ。
※他に鉄還元細菌による窒素固定もある
肥料としてのヤシャブシの葉は養分以上の肥効があるかもしれない
実際の話で、
土壌改良材 + レンゲで土作り後の稲作で、例年と同じ施肥量にも関わらず、窒素肥料過多で育っているように見えたことから、減肥する必要がありそうだという話題が挙がっている。
窒素分の金属系の成分は中干しをしていないため、川からの流水分で補充はできそう。
一発肥料を使用しているので、来年はどれくらいの割合減肥すれば良いのか?
それがいもち病対策の次の一手となりそうだ。
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