縮合型タンニンの生合成やモノリグノール同士のラジカルカップリング等の記事で腐植を理解する為に、ベンゼン環を持つ化合物についてを見てきた。
これらの内容を踏まえ、よくある腐植酸の話題に触れることにしよう。
よくある腐植酸の説明には、フミン酸、フルボ酸とヒューミンという名称を見かける。
各々の特徴は、
フミン酸
アルカリ性溶液に溶け、酸性溶液に不溶の成分で、土壌の黒色を呈し、土壌の構造を安定させる働きがある。
フルボ酸
酸性溶液にもアルカリ性溶液にも溶ける成分で、植物の生育を促進する効果が高く、微量元素の吸収を助ける。
ヒューミン
酸性溶液にもアルカリ性溶液にも不溶の成分で、土壌の骨格を形成し、保水性を高める。
といった説明が記載されている。
どれも腐植物質から形成されているので、難分解性のベンゼン環を持つフェノール性化合物が主であることは間違いないが、酸やアルカリに対する反応が異なる。
これらの違いはどこからくるのだろう?
最初に酸性溶液で溶けるということを考えてみることにしよう。
考えられることは主に2つあるそうだ。
プロトン化
酸性の溶液中では、フルボ酸のカルボキシル基やフェノール性ヒドロキシ基がプロトンを受け取り、それぞれカルボキシラートイオンやフェノラートイオンになる。
これにより、フルボ酸分子全体の電荷が変化し、溶解性が向上する。
キレート形成
フルボ酸は、酸性条件下でも金属イオンとキレート錯体を形成することができる。
このキレート錯体は、水によく溶ける性質を持っているため、フルボ酸が溶解しやすくなる。
細かいことは置いといて、キレート形成の方に触れておく。
ポリフェノールの抗酸化作用を栽培で活用するの記事で腐植の基となるポリフェノールで
のようなキレート錯体が形成されるかもしれないという内容を記載した。
ここから判断するに、フルボ酸では
の構造が多く、フミン酸では少ないということが予想出来る。
どういうことか?というと、リグニンをベースとした腐植物質は
のような構造から合成が開始していて、メトキシ基(-OCH3)はおそらくキレートに関与しないし、保肥力の向上も期待できない。
フミン酸はリグニン由来の腐植物質が多いのだろう。
一方、フルボ酸はキレート作用を有するので、
のようにヒドロキシ基(-OH)が多いタンニンを基にしてた腐植物質が多いのだろう。
このように整理するとうっすらと全体像が見えてくる。
次にアルカリ性溶液に溶けることについて触れたいが、それは次回にする。