プリン体の摂り過ぎは注意の理由は何だ?の記事で巷で言われているプリン体の過剰摂取は尿酸の過剰蓄積に繋がり、関節などで結晶化すると激痛になり、この現象を痛風と呼ぶという内容を記載した。
このように記載すると尿酸を悪だと見做し、できるだけ排出した方が良いと思いたくなるが、そう思うのはもったいないという考え方もある。
今回は尿酸と進化について見ていくことにする。
以前、未熟な鶏糞内に含まれるであろう抗酸化作用の記事で、尿酸には抗酸化作用があるという内容を記載した。
尿酸の抗酸化作用の反応が気になったので、調べてみたら下記のような反応が予想されている事が知った。
※図:髙橋恭子 構造活性相関とドラッグデザイン ―尿酸アナログの合成と抗酸化活性― - 日本医科大学基礎科学紀要 第 50 号(2021)32ページより引用
上記の式では、左下と右の-OHの箇所で電子のやり取りが発生している。
ここで一つ、今回の話に必要な内容を挙げておく。
体の抗酸化作用を持つもので有名なビタミンCことアスコルビン酸は、哺乳類の中でも合成できる種とできない種がいる。
ヒトはビタミンCを合成出来ないが、イヌは合成できるとされている。
これらの内容を踏まえ、ヒトにおいて尿酸がビタミンCの代わりになったのでは?という説がある。
ヒトは進化の過程で尿酸を代謝する尿酸オキシダーゼが欠損し、尿酸がプリン異化の最終生成物となった。
尿酸はビタミンCと同じように血中の活性酸素を除去する作用を持つ為、ビタミンCの合成が不要となった。
石川孝博 植物のアスコルビン酸生合成研究の現状 - ビタミン 94巻 8号(8 月)2020に動物細胞でのビタミンCの合成が記載されている。
ビタミンCの合成はグルコースを基にして行われるが、途中で活性酸素が発生する。
活性酸素の除去の為のビタミンCの合成で活性酸素が発生するのであれば、代替品があればビタミンCの合成を止めた方が有利になるのは当然の流れで、ビタミンCの合成を止めた個体が優位に繁殖できたと考えられる。
ビタミンCの合成にもエネルギーを要する為、ビタミンCを合成しなければその分のエネルギーを節約できる。
ビタミンCの代替が役割を終えた物質の排泄物であるので更に良い。
他にヒトがイヌやネコと異なる点として、ビタミンCを豊富に含む植物性の食品を摂取するので、尿酸 + ビタミンCで還元反応が生じることになる。
果実多め、肉少なめの食生活であれば、尿酸が悪さをすることはないということになるね。
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