前回の記事でホウレンソウに豊富に含まれる葉酸について触れた。
人体においてビタミンB12と協働でDNAの合成に関与するということを知ったので、
植物でもおそらく同じだろうと予想した。
同じであればホウレンソウにビタミンB12が含まれているはずだと、
ビタミンB12を含む野菜を調べてみたところ、
ビタミンB12を含む野菜が見当たらない。
葉酸の働きは人体と植物で異なるのか?
そこで二つのことが頭に浮かんだ。
一つは葉酸は乳酸菌の増殖因子として発見されたので、共生する乳酸菌にビタミンB12に相当する物質を合成してもらい受け取っているのか?
もう一つはそもそも働きが異なるのか?
とりあえず、葉酸(folate)と植物で検索してみたところ、
という論文に行き着いた。
要約すると、
シロイヌナズナの光合成を行わない色素体において、葉酸があると、スクロースから貯蔵用のデンプンの合成が抑制される
というもの。
By Don A. Carlson - Self-made with Inkscape and .svg glucose and fructose graphics from the CommonsこのW3C-unspecified ベクター画像はInkscapeで作成されました., CC 表示-継承 3.0, Link
スクロースというのはグルコースとフルクトースが繋がった二糖で光合成によって合成されたもの。
ショ糖という名で植物の耐寒性の時に触れた。
光合成産物は当然のことながら、
糖を元にアミノ酸等の様々な化合物を合成する材料となるため、
糖を成長に回すか、貯蔵に回すか?は生きることにとって大事な要因となる。
この重要な局面に対して、
葉酸は光合成産物の貯蔵を抑制するという大事な役割があるという。
葉酸が関与する回路図を抜粋すると、
※Plant and Cell Physiology, Volume 58, Issue 8, 06 June 2017, Pages 1328–1338 Fig.9, https://doi.org/10.1093/pcp/pcx076
光合成を行わない細胞内の色素体で、アデニン(adenine)とスクロース(sucrose)を与えた際に何者にも抑制されていない場合は貯蔵性デンプン(starch)を合成して蓄積するが、葉酸(Folate)があると、デンプン合成の途中で働くAGPaseという酵素付近で抑制をかけて、貯蔵性デンプンの蓄積が行われなくなることを意味している。
植物が葉酸を合成できる時期は成長の時期だと捉え、
光合成産物を貯蔵ではなく、成長が活発であると解釈して良いはず。
植物は環境から強いストレスを感じると成長から貯蔵へ成長を切り替えるはずだから、
活き活きと育っている野菜は葉酸の合成が盛んになると言いたいが、
それは話が飛躍している為、ここでは願望程度に留めておく。
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