水溶性のマグネシウムが欲しいけど、残留性(硫酸根)が残るのは極力避けたい。
というような質問を時々受けます。
水溶性で使い勝手のよいマグネシウムと言えば、キーゼライト粉末を使っている人が多い。
キーゼライトは天然硫酸苦土で、化学組成はMgSO4・H2O
化学組成から判断できるように硫酸根のため、苦土のあるところで話題に挙げた炭酸苦土と比較にならない程よく溶ける。
ただ、硫酸根が残留するため、排水性の悪いところやハウスだと残留による障害が怖いところ。
硫酸苦土は強い生理的酸性肥料ではないので、土壌のpHを極端に下げるということはない。
残留性が少なく、しかも好きなタイミングでマグネシウムを施肥出来ないか?
その時に凄腕農家が行っている理に適った方法として、
く溶性マグを予め仕込んでおくか、追肥前に
クエン酸を溶かした水をまくという方法。
く溶性の定義は2%クエン酸溶液で溶ける肥料というのが条件なわけで、2%クエン酸溶液を作成して、それで散布すれば炭酸マグであっても速効性を示すというわけだ。
実際に試験官に炭酸マグを入れてクエン酸溶液で溶かしてみると、
この動画のように発泡を開始する。
発砲時に起こっている反応を見てみると、クエン酸は二箇所でキレート反応を示すはずだったので、
2MgCO3 + C6H8O7 → Mg2(C6H4O7) + 2H2CO3
H2CO3 ⇆ H2O + CO2
生成されたクエン酸マグネシウム:Mg2(C6H4O7)は硫酸マグネシウム程ではないけれど水に溶ける。
炭酸根は水と二酸化炭素になり残留性はなし。
肥料の残留成分はクエン酸根になり、これは土壌中で積極的に消費されるので残留性はなしと見て良い。
本来ならどれくらい溶けるかといった比較も行わなければならないけど、それは面倒なので興味があれば個々人で調べてみてもらうとして、この方法を採用しているところの話では効かせたい時にしっかりと効かせられているということなので、クエン酸マグネシウムの水溶性は栽培レベルでは問題ないと見て良いだろう。
追記
今回の手法はマグネシウムの施肥だけでなく、カルシウムが残留した土での対処として有効な手段となる。
溜まった石灰はクエン酸で溶かして、どこかに流せ。
それを知っているのと知っていないとで大きな差となる。